先行谷(読み)センコウコク

デジタル大辞泉 「先行谷」の意味・読み・例文・類語

せんこう‐こく〔センカウ‐〕【先行谷】

川の流路を横切って地盤隆起山地となる場合に、川が山地形成以前の流路を維持しようと下方浸食をくり返すことによりつくられる谷。四国吉野川大歩危おおぼけ小歩危こぼけなどにみられる。

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精選版 日本国語大辞典 「先行谷」の意味・読み・例文・類語

せんこう‐こくセンカウ‥【先行谷】

  1. 〘 名詞 〙 河川流域を含む一帯の地盤隆起により、河川が元の流路を維持しようと、下刻(下方侵食)をくり返すことによって形成された谷。せんこうだに。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「先行谷」の意味・わかりやすい解説

先行谷
せんこうこく

先行川によってつくられた谷。川の流域を横切って土地が隆起して山地となる場合、土地の隆起の速度より川の下方侵食が大きければ、川は以前の流路を維持して流れる。このように山地の形成以前に流路が決定されていて、現在はその山地を横切って流れる川を先行河川(先行川)といい、先行河川のつくる谷が先行谷である。地盤の隆起速度が川の下刻速度より大きければ、山地の上流側に湖が生じたり、流路を転ずることになる。先行谷を生ずるためには、隆起部の岩石の抵抗性が小さいこと、隆起速度が小さく、流量の多いことが必要である。山地を横切る部分は峡谷をなす。出羽(でわ)丘陵を横切って日本海に注ぐ最上(もがみ)川、赤石山脈を横切る天竜川などが代表例で、東北日本に多い。

[髙山茂美]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「先行谷」の意味・わかりやすい解説

先行谷
せんこうこく
antecedent valley

河川の流路を横切って地盤が隆起する場合,隆起の速さが下刻の速さに及ばなければ,その河川はもとの流路を保持して隆起部を貫流し,そこに峡谷をうがつ。この谷を先行谷,その河川を先行河川という。先行谷は山地を横断する横谷一種。天竜川の天竜峡付近,吉野川の大歩危 (おおぼけ) ,小歩危,ドイツのマインツ~ボン間のラインの峡谷などの例がある。横谷部には河岸段丘が発達して,その部分の隆起の状態を示すことが多い。

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百科事典マイペディア 「先行谷」の意味・わかりやすい解説

先行谷【せんこうこく】

隆起した山脈に対してそれを横切るように流れる深い峡谷のこと。横谷の一種。山脈の隆起速度より谷の下刻速度が速い場合にできると考えられる。
→関連項目

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世界大百科事典(旧版)内の先行谷の言及

【横谷】より

…断層に沿って選択浸食が働き断層線谷を生ずる場合(断層地形)。川の流路を横切って土地が隆起するときに川の下刻が地盤の隆起速度にうちかって,以前の流路を維持して形成された先行谷となって山地を横切る場合。また,浸食の復活により軟らかい被覆層が削られて,その下の基盤の起伏とは無関係に発達してきた流路の途中に相対的に硬い部分の基盤岩石が山稜状の突出部として残った場合に,この突出部を横断してもとの流路を維持する表成谷または積載谷も横谷となる。…

【峡谷】より

…谷底には平たんな所が少なく,谷床平たん面を欠く。峡谷は,谷壁をなす部分の岩石が硬くて急崖を保持できるような所,河床勾配が急で下刻が活発に行われる所,先行谷や表成谷として山地を横切る所,すなわち河川の流路が決定された後に隆起などで生じた山地をそのままの流路を保って下刻した場合(先行谷)や,河川が基盤の構造に無関係にそのまま流路を保って下刻した場合(表成谷)などに形成される。また,乾燥気候下にあり,谷壁斜面上で雨食や風化が進まない地域の方が峡谷の形成に好都合な条件を備えている。…

※「先行谷」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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