児手柏・側柏（読み）このてがしわ

精選版 日本国語大辞典

このて‐がしわ ‥がしは【児手柏・側柏】

〘名〙

① (古くは「このてかしわ」) ヒノキ科の常緑低木または小高木。中国北部原産で、江戸時代に渡来し、観賞用に栽植される。樹高は一〇メートルに達することもある。小枝は良く分枝して、てのひらを立てたように側立して広がる。葉はヒノキの葉に似たうろこ状で、密生するが表裏の区別がない。雌雄同株。春、球形の雄花と卵円形の雌花をつける。果実は卵状球形。材は器具、建築材に用い、種子は柏子仁と称し強壮薬に、葉は側柏葉といい止血剤に用いる。はりぎ。てがしわ。そのて。ふたおもて。

※万葉（８Ｃ後）二〇・四三八七「千葉の野(ぬ)の古乃弖加之波(コノテカシハ)の含(ほほ)まれどあやにかなしみ置きてたか来ぬ」

② (①の「万葉集」例を誤解したもの) 植物「おとこえし（男郎花）」の異名。

※袖中抄（1185‐87頃）七「このてがしは〈略〉私云、このてがしはを男郎花とも云、おほどち共云は、同事也」

③ (形動) (①の葉の表と裏が似ているところから)

(イ) 言葉、心の表裏を両方に使い分けること。また、表裏両様に使うこと。

※評判記・難波物語（1655）「このてがしはなるけいせいの」

(ロ) いずれとも予測できない状態。

※雑俳・朝熊嶽（1730）「勝負はこの手柏や鶏合」

④ 此手縞(このてじま)の平織物。

[補注]①や、子見出しの「万葉集」例については、古来諸説あり、②もその一つ。他に、①とする説、ブナ科のコナラ、カシワ、トチノキ科のトチノキなどの落葉樹とする説など。

出典　精選版 日本国語大辞典