個人や企業が依頼した日本円の振込みや送金について、金融機関の口座どうしで処理(決済)するための銀行間ネットワークシステム。略称の「全銀システム」でよばれることが多く、海外では「ZENGIN」の名称で知られる。日本銀行金融ネットワークシステム(日銀ネット)や外国為替(かわせ)円決済システムと並ぶ、日本の主要な決済システムである。1973年(昭和48)に稼働し、全国銀行協会傘下の一般社団法人全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)が運営している。加盟するのは都市銀行、地方銀行、信託銀行、信用金庫、信用組合、農業協同組合、労働金庫、外国銀行、ゆうちょ銀行などで、2023年から「PayPay(ペイペイ)」「NTTドコモ」などのスマートフォン決済事業者(資金移動を業とするフィンテック企業)の接続も可能となる。これにより銀行口座どうしのほか、銀行口座とスマホ決済アプリ間や、異なるスマホ決済アプリどうしの決済が実現する。加盟金融機関は維持管理費を拠出し、万が一の決済資金不払いに備え、加盟金融機関から担保・保証を受け入れている。稼働以来、トラブルで停止したことはない。全銀システムはほぼ8年ごとに更新(第1次システムのみ6年間)しており、2022年(令和4)時点で第7次システムが稼働し、2027年から第8次へ移行する。1日平均675万件、約12.2兆円の取引を処理している。
東京と大阪にある全銀センターに設置された大型ホストコンピュータと各金融機関を専用通信回線でつないで処理を行う。銀行間の取引情報は両センターから日銀ネットに送信され、日銀当座預金の入金または引落としで決済される。稼働以来、稼働時間は平日昼のみだったが、世界的な24時間決済の流れやネット決済の普及にあわせ、2018年(平成30)10月から24時間365日稼動となった。全銀システムはきわめて安全性が高い半面、コストがかかり、銀行間決済の手数料が高止まりする要因となってきた。公正取引委員会は2020年、手数料の引下げと全銀システムへの資金移動業者の接続が望ましいとの報告をまとめた。これを受け2023年から全銀システムをスマホ決済事業者へ開放すると同時に、メガバンクや地方銀行は2022年10月から、全銀システムを経由しない独自システムで、少額を低料金でスマホ決済できる送金サービス「ことらCOTRA」を稼働させた。
[矢野 武 2022年12月12日]
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