公衆電話(読み)コウシュウデンワ

デジタル大辞泉 「公衆電話」の意味・読み・例文・類語

こうしゅう‐でんわ【公衆電話】

街頭や店頭などに、一般の人々が利用できるように設けられた有料電話。

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共同通信ニュース用語解説 「公衆電話」の解説

公衆電話

阪神大震災発生直後の1995年3月末、全国に約80万台設置されていたが、2017年3月末には約16万台まで減った。携帯電話の広がりで、90年代半ばから減少傾向が続く。110番や119番は無料で通報することが可能。回線混雑による通信規制の対象にならないため、災害時に電話利用が殺到してもつながりやすい。NTTは停電など被災地状況を判断し、一般通話も無料とする場合がある。16年3月には、誘拐事件の被害者の少女が、都内の駅の公衆電話を使い110番し、役割に注目が集まった。

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精選版 日本国語大辞典 「公衆電話」の意味・読み・例文・類語

こうしゅう‐でんわ【公衆電話】

  1. 〘 名詞 〙 一般の人々が随時使用することができるように、街頭の要所や駅前など繁華な所に設置された電話。日本では明治二三年(一八九〇)、電話業務開始とともに電信局の中に設置され、同三三年にはじめて街頭に設置された。
    1. [初出の実例]「公衆電話で、『矢の倉』の師匠のところへ電話をかけた」(出典:春泥(1928)〈久保田万太郎〉むほん)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「公衆電話」の意味・わかりやすい解説

公衆電話
こうしゅうでんわ

不特定多数の人々が利用することを目的とし、利用しやすい場所に設置される電話。日本で使用されている一般の公衆電話には、「第一種公衆電話」と「第二種公衆電話」があり、NTT東日本および西日本により設置されている。第一種公衆電話は、電気通信事業法施行規則等により、社会生活上の安全と戸外における最低限の通信手段を確保するために、ユニバーサルサービス(基礎的電気通信役務)の一つとして、公道上や公の施設等に設置されている。第二種公衆電話は、利用が多く見込まれる場所に利用実態に応じて設置される。通常は有料であるが、警察機関や消防機関等への緊急通報の場合は無料となり、停電時も使用可能。災害時の無料化措置が行われた場合は、無料で停電時も利用できるほか、通信規制の対象外として優先的に取り扱われる。

 災害時用の特設公衆電話には、あらかじめ避難所等の施設管理者が非常用電話機を保管しておき、災害発生時に回線につないで利用可能にする「事前設置型」と、災害の発生を受けてから設置される「事後設置型」がある。災害時の無料化措置が行われた場合は、一般の公衆電話と同様に優先接続機能が設定され、無料で停電時も利用可能となる。2022年(令和4)4月よりユニバーサルサービスに位置づけられた。なお、加入電話の一種ではあるが、不特定多数の人々も利用できるものとして、喫茶店・食堂などに設置される特殊簡易公衆電話(通称ピンク電話)がある。

[宇治則孝・星野博文・編集部 2023年8月18日]

歴史

日本の電話交換業務は、1890年(明治23)に東京と横浜で開始されたが、公衆電話の始まりも同時期であり、電信局の中などに電話所が設けられた。街頭に初めて公衆電話が現れたのは1900年(明治33)9月で、東京の新橋・上野両駅構内に設置された。翌10月には最初の公衆電話ボックスが京橋のたもとに建てられた。これは当時「自働電話」とよばれ、5銭、10銭の二つの投入口があり、料金の投入を音の違いによって交換手に知らせるものであった。1925年(大正14)に自動式の導入を機に「公衆電話」と呼び名が改められた。その後、種々の変遷を経て、これが「青電話」になった。

 硬貨式の公衆電話は1953年(昭和28)1月に、赤電話は同年10月に、ピンク電話は1959年に登場した。当初、市外通話は交換取扱者への申込みによっていたが、自動で即時につながる地域の拡大に伴い、1966年からは、利用者自身のダイヤルで市外通話ができる公衆電話が実用化され、公衆電話サービスは飛躍的に向上した。さらに使用硬貨が10円1種類のため、遠距離通話の増加に伴って、利用上の煩わしさ(両替や追加投入など)について改善を望む声が強くなり、100円硬貨も併用できる黄電話が1972年から導入された。

 その後1982年に、硬貨の投入、両替の煩わしさをなくし、より便利に使用できるように、磁気カード式公衆電話が登場し、1995年(平成7)にはピンク電話をのぞくすべての公衆電話が磁気カード式公衆電話(硬貨併用型を含む)にかわり、青電話、赤電話、黄電話は姿を消した。

 移動体公衆電話については、列車公衆電話が1957年に、航空機公衆電話サービスが1986年に始まったが、携帯電話の普及等の影響により、航空機公衆電話は2004年(平成16)に廃止、列車公衆電話は2021年(令和3)廃止された。船舶電話は硬貨投入式サービスが1981年に開始されたが、1996年以降は衛星船舶電話サービスに移行している。2011年、船舶や山小屋施設向けの簡易衛星公衆電話サービスが開始された。

[宇治則孝・星野博文・編集部 2023年8月18日]

街頭公衆電話機

もともとはいわゆる「青電話」のことで、終日利用できる電話機。主として街路などの電話ボックスに取り付けられるボックス公衆電話機と、キャビネットや駅構内・ホテル・病院などのビル内に設置される卓上公衆電話機に分けられていた。ボックス公衆、卓上公衆のいずれの電話機にも、10円硬貨専用の青色の電話と、100円硬貨併用の黄色の電話(1972年導入)とがあった。

[宇治則孝・星野博文]

店頭用公衆電話機

いわゆる「赤電話」のことで、おもに昼間の電話利用に供するため、一般商店・売店などの店頭に設置されていた赤色の公衆電話。硬貨投入により一般ダイヤル通話ができるとともに、電報発信(115番)や申込み通話(100番)も、受託者の鍵(かぎ)の操作により行うことができた。10円硬貨専用の赤電話と、100円硬貨も併用できる100円赤電話とがあった。

[宇治則孝・星野博文]

磁気カード式公衆電話機

硬貨のかわりに磁気カード(テレホンカード)を用いて通話のできる公衆電話機。テレホンカードには、あらかじめ利用可能度数が記録されており、これを電話機へ差し込むことで、硬貨の場合と同様に通話が可能となる。テレホンカードの利用可能度数は、使用度数に応じて逐次減算され、記録度数がなくなるまで、テレホンカードを繰り返し使用することができる。緑色の公衆電話で、テレホンカードと硬貨の併用型に加え、テレホンカード専用型も導入されている。

[宇治則孝・星野博文]

デジタル公衆電話機

従来のアナログ回線にかわり、ISDN回線を使用した公衆電話機。電話機の前面にISDN端末やアナログ端末(モデム付きパソコンなど)を接続するコネクターがあり、データ通信などが可能になっている。1990年(平成2)から設置され、色はライトグレーが基本となっている。

[宇治則孝・星野博文]

ICカード公衆電話機

磁気カードではなく、ICカードを用いて通話のできる公衆電話機。ICカードは磁気カードに比べてメモリー容量が大きいことから、偽造カードがつくりにくいだけでなく、メモリーを使用した新たなサービスの可能性をもっている。1999年3月から設置されている。

 なお、日本における公衆電話の設置台数は、携帯電話の普及に伴う使用頻度の低下により減少傾向にあり、ユニバーサルサービス制度が開始された2002年度末時点で約58万4000台設置されていたものが、2019年度(令和1)末時点では約14万6000台となっている。

[宇治則孝・星野博文・編集部 2023年8月18日]

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改訂新版 世界大百科事典 「公衆電話」の意味・わかりやすい解説

公衆電話 (こうしゅうでんわ)

不特定多数の人の利用に供するため,街頭,店頭等の公衆が利用しやすい場所に設けられた電話。日本の公衆電話は,オフィスや住宅の加入電話が不足していた時代には,それを補う共同施設としての役割が大きかったが,加入電話の普及した現在では,それと連動して機能する便利な戸外の連絡手段として,国民生活のなかに浸透している。また,種々の緊急連絡手段としても重要な役割を担っている。

 初めて日本に街頭用公衆電話が架設されたのは,1900年9月11日で,東京の新橋と上野駅前および熊本市内にそれぞれ1台ずつ設けられた。当時はこれを自働電話と呼んだ。しかし25年,電話がダイヤル式になると,公衆電話と呼ばれることになった。関東大震災前は,ボックスは六角形で,屋根も胴体も赤く塗られ,背面と正面以外は上部が桟の多いガラス窓で,下部が鉄格子であった。時代とともにボックスの形は変化しているが,しだいに周辺の環境との調和にも配慮されるようになっている。

 公衆電話は第2次大戦後めざましく発展したが,その過程においてニーズの変化や技術の進歩につれて以下に述べるような多様なものが導入され,それらが最近まで共存していた。

(1)街頭公衆電話 公衆電話ボックスに取りつけられたボックス型のものと駅頭などに見られる卓上型のものでボックス型には市外通話に便利な100円硬貨も使える黄電話と,10円硬貨用の青電話があった。

(2)店頭公衆電話 タバコ屋や駅の売店に設置されたいわゆる赤電話。

(3)農村公衆電話 電話の普及が遅れている農山村に設けられる。(4)特殊公衆電話 電話局や郵便局の前に設置し,夜間または休日など,窓口が閉まっている場合に電報を打つのに使われる。(5)公衆シルバーホン 耳の遠い老人などのために設置される。(6)ピンク公衆電話 喫茶店やレストランなど公衆が多く出入りする場所に設置されている特殊簡易公衆電話(97年3月末現在,79万5701台)。

 しかし近年,プリペード・カード(テレフォンカード)使用電話(カード式電話,1982年12月に導入)の普及が急速に進み,96年時点では赤,青,黄色の公衆電話はすべて撤去されている。また,店頭公衆電話というサービス分類もなくなった。こうした電話機にかわって設置されているカード式電話機のなかには,1990年より導入されたディジタル公衆電話機も含まれており(全公衆電話機の約10%),NTTのISDN回線(INSネット64。〈サービス総合ディジタル網〉参照)に接続できる。ただし,ポケットベル,移動体電話(携帯電話)の普及により,公衆電話の台数は90年代初頭より減少傾向にある。97年3月末時点におけるNTTの公衆電話機台数は79万3870台(ただしピンク公衆電話を除く)。

 このほか,長距離電話系NCC(New Common Carrier,新電電)の日本テレコム,テレウェイも,それぞれJR駅頭および高速道路施設内を主な設置スペースとして公衆電話サービスを提供している。
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百科事典マイペディア 「公衆電話」の意味・わかりやすい解説

公衆電話【こうしゅうでんわ】

公衆の利用に供せられる電話で,硬貨の投入や磁気カードの挿入により通話可能となる電話機が使用される。ボックス式の普通公衆電話,卓上式の委託公衆電話(赤電話)のほか,加入電話であるが公衆に対し市内通話の取扱いができる特殊簡易公衆電話(ピンク電話)がある。近年はデジタル回線の普及にともないデジタル公衆電話が多く設置され,携帯電話を接続してデータ通信を容易に行うことができるようになった。また国際ダイヤル通話ができる電話機の設置も増加している。その他,局内公衆電話,船舶公衆電話,東海道新幹線内などの列車公衆電話,非常災害などに際し災害地に設けられる災害地特設公衆電話などがある。近年,携帯電話の急速な普及でその役割は減少しつつある。日本の街頭用公衆電話は1900年に東京の新橋駅と上野駅,熊本で架設され〈自働電話〉と呼ばれたが,1925年のダイヤル式導入以後に公衆電話となった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「公衆電話」の意味・わかりやすい解説

公衆電話
こうしゅうでんわ
public telephone

加入電話または地域団体加入電話以外の電話で,一般の使用のために設けられたもの。次のようなものがある。 (1) 街頭公衆電話 普通青電話といわれるもので,駅前や繁華街など街頭にあり,ボックス式やポール式がある。取扱者をおかず,取扱時間の制限もない。 (2) 店頭公衆電話 電話器が赤いので赤電話ともいう。 NTTが設置場所を選定し,取扱者を委託するもので,たばこ屋や各種業者の店頭などにあるもの。 (3) 局内公衆電話 郵便局,電報局などの局内にあって,局の営業時間中は自由に使うことができる。 (4) 特殊簡易公衆電話 ピンク電話ともいう。加入電話を NTTと契約して,一般にも利用させるもので喫茶店などにある。このほか,列車公衆電話などがある。なお,1990年の街頭公衆電話数は 72万 6343台,店頭公衆電話は 10万 6394台となっている。

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