民間社会福祉事業を推進するための財源を国民ひとりひとりの自発的な助け合いの精神で集めようとする全国民的募金運動。コミュニティ・チェストcommunity chestの訳語。赤い羽根をシンボルとしている。モデルは、1913年アメリカ合衆国オハイオ州クリーブランド市での取組みである。募金者の胸につける赤い羽根は、1928年ルイジアナ州ニュー・オーリンズ市、テキサス州ダラス市で用いられ始め、1945年から全国に普及したが、現在アメリカではほとんど使用されていない。日本では、1921年(大正10)長崎県社会事業協会が行ったのが初め。1946年(昭和21)10月、連合国最高司令官総司令部(GHQ)公衆衛生福祉局は「政府の私設社会事業団体に対する補助に関する件」覚書で政府の民間社会事業に対する補助を禁止した。そこで、民間社会事業に対する援助のため、公衆衛生福祉局課長ネフNelson B. Neffの助言と、孤児や非行少年のための「少年の町」の開設者として知られるアメリカ人神父フラナガンEdward Joseph Flanagan(1886―1948)の勧めで、1947年に第1回共同募金運動が実施され、5億9000万円が集められた。このときはブリキのバッジを用いたが、1948年から赤い羽根となった。社会福祉事業法(昭和26年法律第45号、2000年に改正して社会福祉法と名称変更)で法制化された。なお、中央共同募金会によると、現在赤い羽根を使っているのは日本と南アフリカだけで、他の国々では手と虹を表すマークを使用している。
共同募金運動は、全国およそ200万人のボランティアの協力を得て毎年1回厚生労働大臣が定める期間(例年は10月から12月まで)に行われるが、年間を通じてさまざまな形で寄付金の受入れを行っている。募金運動の主体は各都道府県共同募金会で、その区域内の地域福祉活動を行う団体等から広く募った助成についての要望を基に、助成計画および住民参加により策定した市区町村における共同募金推進計画(当該地域における助成計画および募金計画など)に基づいた募金活動および助成を実施する。募金の形態には、街頭募金のほかに、町内会・自治会の役員、班長が担う募金ボランティアが各家庭を訪問して寄付をお願いする戸別募金、法人募金、学校募金、職域募金などがある。共同募金会への寄付は、法人、個人ともに、税制上の優遇措置の対象となっている。
募金目標額と実績との割合をみると、1949年度に初めて100%を超え、1973年度は139%とピークを示した。1993年度(平成5)以降には110%以下となり、2004年度(平成16)から2014年度の数値をみると、100%を下回り92%まで低下している(中央共同募金会2015「昭和22年度~平成26年度 一般募金・歳末たすけあい募金の目標額と実績額の推移」)。
[横山和彦・岩永理恵 2016年7月19日]
『中央共同募金会編・刊『みんな一緒に生きていく――共同募金運動50年史』(1997)』
民間社会福祉事業や更生保護事業の資金に充てるため,(個々の事業団体とは別の)一定の民間機関によって,一括してひろく国民各層から寄付金を募ること,またその運動。都道府県の区域を単位として行われ,その区域内で民間の社会福祉事業または更生保護事業を経営する者の過半数に寄付金を配分することが原則となっている。
共同募金はイギリスのリバプールで1873年,日本では1921年に長崎市で初めて行われたが,いずれもひろく波及するに至らず,アメリカで1910年代から発展し,全国的に普及した。日本では第2次大戦後,民間社会福祉事業の経営の窮迫を救うために,厚生省の指導で47年から始められ,発足時より今日まで〈赤い羽根〉を運動のシンボルとして(1928年アメリカのニューオーリンズとダラスで行われたのに範をとる)毎年実施されている。51年制定の社会福祉事業法に1章を設けて,共同募金の主旨・目的・性格・期間・配分および共同募金会等について規定されている。それによると共同募金は資金需要に応じてあらかじめ目標額,受配者の範囲,配分の方法などを定め,これを公告して寄付金を募集する計画募金とされ,毎年1回厚生大臣が定める期間内に行われる。現在は10月1日から12月31日までの期間に,戸別募金,法人募金,職域募金,街頭募金などの方法によって行われる。共同募金の事業を行うことを目的として都道府県ごとに社会福祉法人の共同募金会が設けられ,その連合会として連絡調整の役割を担う中央共同募金会が組織されている。共同募金会以外のものが共同募金を行うことは禁止されている。集められた寄付金は民間の施設・団体に配分されるが,その適正を期するため,都道府県共同募金会は第三者からなる配分委員会を設置して行う。配分を完了したときには1ヵ月以内に募金の総額,配分をうけた者の氏名または名称および配分額を公告しなければならない。47年から96年まで50年にわたる募金額の累計は5300億円を超え,施設の改修や在宅福祉の費用に充てられてきたが,在宅福祉に対する指定寄付が増える傾向にあり,さらにボランティア活動を含めた住民参加による福祉のまちづくりに対する財政的援助が期待されている。
執筆者:永田 幹夫
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