共同受信方式(読み)きょうどうじゅしんほうしき(英語表記)community reception system

日本大百科全書(ニッポニカ) 「共同受信方式」の意味・わかりやすい解説

共同受信方式
きょうどうじゅしんほうしき
community reception system

テレビ電波の届かない地区においてもテレビが見られるようにするために考えられた受信システム共同視聴方式(共聴方式)、CATVcommunity antenna televisionまたはcommon antenna televisionの略)ともいう。最初は1949年アメリカのオレゴン州で始められた。その構成は、テレビの電波が良好に受信できる場所にアンテナを設置し、ここで受信したテレビ信号を必要に応じて増幅したのち、同軸ケーブルなどでいくつかの家庭に分配するもので、日本では1955年(昭和30)伊香保(いかほ)温泉(群馬県)に最初に導入された。山地の多い日本では、山間辺地に多く設置されるところから、とくに辺地共聴といわれることもある。

 以上のように共同受信は辺地から出発したが、現在は大都市でも行われている。日本では1963年に建築基準法が改正され、建造物の高さの制限が廃止されてから、大都市において急激にビルの高層化が進み、また高速道路の建設、各種鉄塔など、高層建造物の増加もあって都市におけるテレビ受信状況が問題になってきた。この対策として、ビルの屋上など受信状況のよい場所にアンテナを設置し、その受信信号を増幅したのち、ビルやマンションの各部屋、あるいはそれらの建造物周辺の家庭に分配するシステムが導入された。このほか、アパートなどの集合住宅において、各戸でアンテナを立てることによる美観上の問題、1軒で複数台のテレビを使うためにアンテナの出力を分配する必要から生まれた共同受信もある。したがって共同受信の設備や規模によって種々の呼称がある。一つの家庭でアンテナを立て、いくつかの部屋に信号を分配する程度のものはホーム共聴、アパートの各世帯に分配するものはアパート共聴あるいはマンション共聴、ビルの場合はビル共聴、さらにビルによって放送波が遮られた状態を改善するためのシステムは、ビル陰共聴などともよばれる。また、規模のあまり大きくないシステムを総称してMATVmaster antenna television略称)とよぶ場合もある。

 これらの設備は、アンテナ、各種増幅器分配器、整合器、保安器および同軸ケーブルなどからなっているが、システムの規模によって、一部だけしか使われない場合もある。一般に辺地共聴では、地理的条件から家と家の距離が長くなることが多いため、信号の減衰を補償する増幅器がいくつも必要になる。ビル共聴では部屋数が多いため、分配器、分岐器などを多数必要とする。

 共同受信方式は、放送波を分配することから出発したが、同軸ケーブルが多くの信号を伝送できるため、自主番組を制作して空チャンネルに流したり、加入者から必要な情報を要求したりすることができるようなシステムへと発展した。このシステムはケーブルテレビcable televisionとよばれる。なお、詳しくは「CATV」の項目を参照されたい。

[吉川昭吉郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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