1本の円形の中心導体とこれを同心状に囲む円筒形の外部導体を配置し、その内外部導体間を絶縁した不平衡通信ケーブルである。1934年アメリカのシェルクノフらの提案以来、無装荷搬送ケーブルにかわる多重線路として同軸ケーブルが着目されるようになった。日本でも1938年(昭和13)から開発が始められ、40年に開催予定であった東京オリンピックを目標として東京―大阪間にテレビ伝送用に同軸ケーブル敷設が計画された。しかし、戦争のため渋谷―島田間に敷設されただけで回線開通には至らなかった。
長距離幹線用のケーブルは9.5ミリメートル同軸ケーブル(標準同軸ケーブルともいう)で、1956年(昭和31)から敷設されている。外部導体の内径が9.5ミリメートルであって、中心導体約2.64ミリメートル上にポリエチレンの円板を等間隔に装着し、その周囲に同軸円状に銅の外部導体を配置し、必要本数を撚(よ)り合わせ鉛被を施したケーブルである。1本の同軸心(1心)で電話1万0800回線あるいは4メガヘルツのテレビ信号を9回線送ることができる。
長距離用の4.4ミリメートル同軸ケーブル(細心同軸ケーブルともいう)は、1965年に採用され、外部導体の内径が4.4ミリメートルで、中心導体に絶縁用突起付きポリエチレンテープを円筒形に縦に包み溶着し、その周囲に同軸円状に銅の外部導体を配置した構造であり、1本の同軸心で電話2700回線を送ることができる。
同軸ケーブルの構造で身近なものに同軸コードがある。同軸コードはテレビアンテナのフィーダー、高周波機器の配線、高周波測定器用リード線などに使用され、中心導体は軟銅単線あるいは撚り線、絶縁体はポリエチレン充実形、外部導体はたわみ性に富む軟銅線編組が使用され、ビニル被覆が施されている。
[佐久間照夫]
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円筒状の外部導体の中央に中心導体を配して,1対の往復線路とした通信ケーブル。同軸ケーブルは,外部に電磁波が漏れにくい構造となっているため,数百MHzの高い周波数を伝送できる特徴があり,電話回線をはじめとし,有線テレビジョン回線など広帯域伝送線路として広く用いられている。1934年アメリカのエスペンシードL.Espenshiedらによる同軸伝送線路の理論が発表されて以来,平衡形ケーブルが注目されるようになった。日本でも37年から研究が始められ,56年に大容量搬送多重方式として9.5mm標準同軸ケーブルを用いたC-4M方式(電話960チャンネル)がはじめて導入された。その後C-12M方式(電話2700チャンネル)およびこれをトランジスター化したC-12MTr方式が導入され,74年にはC-60M方式(電話10800チャンネル)が商用化された。また,これと並行して4.4mm細心同軸ケーブルを用いたP-4M方式(電話960チャンネル),P-12MTr方式(電話2700チャンネル)が導入され,さらに同様の方式が海底通信にも用いられている。また,パルス符号変調方式による時分割多重を用いた同軸ケーブル通信方式として,DC-100M方式(電話1440チャンネル),DC-400M方式(電話5760チャンネル)が開発されている。
執筆者:辻井 重男
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…したがって,平衡型ケーブルの用途は,局内ケーブル,市内ケーブルおよび100km未満の市外ケーブルといった短距離,小容量の通信路に限られる。 一方,不平衡型ケーブルの代表である同軸ケーブルは,円筒状の外部導体とその中央にある内部導体とを往復線路として構成される。このように,同軸ケーブルは,外部に電磁波が漏れにくい構造となっているため,数百MHzまで使用でき,高周波伝送に適している。…
…したがって漏話による周波数帯域幅の制限により,多重度をあまり高くとることができないのである。この問題を抜本的に解決した方式が同軸ケーブルである。同軸ケーブルは細い銅管を外部導体とし,この中にこれと絶縁した中心銅線を通した形のケーブルであり,外部導体の遮へい効果から高周波における漏話を著しく小さくできるのが特徴である。…
※「同軸ケーブル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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