翻訳|turnout
軌道上の車両を他の方向へ安全に移行させるために設けられた装置で、軌道を二つ以上の軌道に分ける軌道構造。一般に分岐器、ダイヤモンドクロッシング、シーサスクロッシング、スリップスイッチを総称して分岐器類といっており、単に分岐器と称する場合が多い。
JRグループにおいては、日本全国で約6万9000組の分岐器が敷設されており、線路延長約2万2000キロメートルのほぼ1割を占めている。日本では、1873年(明治6)に初めて鉄道が敷設されてから今日までおよそ100年以上の歴史のなかで、新幹線の毎時220キロメートルに耐える高速分岐器から、狭軌線高速化に伴って優等列車の毎時130キロメートルの走行用高速分岐器までが設計され実用化されている。
なお、一つの線路から他の線路に分岐するために転てつ器が設けられており、機械式と電気式があるが、電気式が一般的である。
[吉岡槙雄]
普通分岐器と特殊分岐器に大別されるが、普通分岐器はさらに直線から分岐するものと、曲線から分岐するものに分けられる。
[吉岡槙雄]
(1)直線から分岐するもの。〔1〕片開き分岐器 基準線が直線で、他の一線が左右いずれかに分かれる分岐器。〔2〕両開き分岐器 直線軌道が左右対称に二つに分かれる分岐器。〔3〕振分(ふりわけ)分岐器 直線軌道が左右非対称に二つに分かれる分岐器。分岐角を振り分ける比率を振分率といい、片開き(10対0)から両開き(5対5)までの間に数多くあるが、JRでは、9対1、4対1、3対1、7対3、2対1、3対2の6種類を標準としている。(2)曲線から分岐するもの。〔1〕内方分岐器 基準線の内方に分かれる曲線分岐器。JRではこの曲線半径を、300メートル、350メートル、400メートル、500メートル、600メートル、700メートル、800メートル、1000メートル、1200メートル、1500メートル、2000メートルの11種類としている。〔2〕外方分岐器 基準線の外方に分かれる曲線分岐器。曲線半径の標準は内方分岐器と同じである。
[吉岡槙雄]
〔1〕ダイヤモンドクロッシング 二つの軌道が交差する軌道構造。〔2〕シーサスクロッシング 隣り合う二線間の二つの渡り線が交差する軌道構造。これは四組の分岐器と一組のダイヤモンドクロッシングから構成されている。〔3〕渡り線 二つの軌道を連絡する軌道構造。〔4〕スリップスイッチ ダイヤモンドクロッシングの片側に渡り線をもったシングルスリップスイッチと、ダイヤモンドクロッシングの両側に渡り線をもったダブルスリップスイッチとがある。〔5〕三枝分岐器 一軌道を一か所のポイント部で三方向に分ける分岐器。〔6〕複分岐器 一軌道を二か所のポイント部で三方向に分ける分岐器。〔7〕三線式分岐器 3本のレールを並列して、二つの軌間を併用している軌道に用いる分岐器。〔8〕四線式分岐器 4本のレールを並列して、二つの軌間を併用している軌道に用いる分岐器。〔9〕直結分岐器 道床バラストを用いないで、コンクリート床などに取り付けた構造の分岐器。スラブ分岐器もこれに含まれる。
[吉岡槙雄]
分岐器は、ポイント、基本レール、主レール、リードレール、トングレール、ガードレール、クロッシングから構成される。(1)ポイント 軌道を分ける部分の軌道構造をいう。通常の片開き分岐器は関節および滑節ポイントであるが、高速分岐器は弾性ポイントを、ヤード用分岐器は直線ポイントを使用している。新幹線の本線分岐器はすべて弾性ポイントである。(2)クロッシング 分岐器のなかで、レールが交わる部分を構成するもので、固定クロッシングと可動クロッシングに大別される。
[吉岡槙雄]
日本では分岐器の番数で分岐器の角度を示している。分岐器の角度が緩やかであれば、リード曲線半径を大きくでき、分岐側の通過速度を大にすることができる。
分岐器は、敷設状態によって、突き合わせ、突き付け、対向、背向と称している。また、定位(分岐器の常時開通している方向)、反位(分岐器の常時開通していない方向)とも称している。
[吉岡槙雄]
『宮本俊光・渡辺偕年編『線路――軌道の設計・管理』(1980・山海堂)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…これら設備の基準は日本国有鉄道建設規程,新幹線鉄道構造規則や地方鉄道建設規程によって定められている。国鉄では各線区を通過トン数,最高速度などにより線路等級ごとに分類し,軌道構造,線路の曲線半径の最小値,こう配の最大値などを定めるとともに,車両限界と建築限界,車両構造,分岐器の構造,停車場,信号保安設備,電車線路などの基準を細かく規定している。なお,車両については〈貨車〉〈客車〉〈蒸気機関車〉〈ディーゼルカー〉〈ディーゼル機関車〉〈鉄道車両〉〈電気機関車〉〈電車〉の項目を参照。…
※「分岐器」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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