かつて大国が独占していた核兵器、化学兵器、生物兵器、長中距離ミサイルなどの大量殺りく兵器(weapons of mass destruction)を、中小国や武装集団が保有、生産するようになる動きとその過程。拡散の阻止は米国にとって、冷戦後の安全保障の最重要課題。阻止の方法としては、(1)条約の強化。核拡散防止条約、包括的核実験禁止条約(CTBT)、化学兵器禁止条約、生物兵器禁止条約など。(2)先進工業国の共同輸出規制。ミサイル関連技術、化学・生物兵器の原材料や製造設備、通常兵器の関連機資材の輸出規制など。(3)軍事的阻止。例えば、完成直前の核関連施設・化学兵器施設などの軍事的破壊。(4)国際社会における政治、外交的対応、など。しかしそれらはインド、パキスタンの核実験などに直面し破綻した。兵器拡散の要因は、(1)非先端的な武器の拡散、(2)世界市場における武器情報、製造情報の商品化、(3)技術者の国際移動、(4)拡散阻止のための諸条約が、正当性、検証の実効性などで問題が多い、など。半面、人々の意識は変化し、核兵器は「使用や威嚇が、国際法や人道に関する諸原則に反する」(国際司法裁判所)と判断され、核実験や核保有自体が法的・道義的に問題視されている。このように一方で大量殺りく兵器を否定する意識が高まり、他方でその拡散防止の枠組みが破綻する狭間で、兵器拡散は国際政治の重大な関心事である。