円村(読み)えんそん

精選版 日本国語大辞典 「円村」の意味・読み・例文・類語

えん‐そんヱン‥【円村】

  1. 〘 名詞 〙 ( [ドイツ語] Runddorf訳語 ) 家畜を守るために広場中心として、これを取り囲む形で民家を造り、耕地を民家の背後放射状に区画した村。ドイツ東部からポーランドにかけて分布する。環村

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日本歴史地名大系 「円村」の解説

円村
いんむら

[現在地名]龍郷町えん

嘉徳かど村の北東に位置し、集落は入江に南面する。標高約八〇メートルにある円グスクは土塁を施す曲輪を主体とするもので、幅が八、九メートル、長さ四四メートル、空堀の幅が上部五・九メートル、下部一・四メートル、長さ一四メートル。大城・城田などの地名が残る。名瀬なぜ間切龍郷たじご方のうち。正保琉球国絵図に村名の記載はないが、浜方の地先に「立神」、西の嘉徳村との間に「たん崎」と記される。「三州御治世要覧」に円村とあり、「大島私考」にも龍郷方一〇ヵ村のうちとしてみえ、高三一石余、うち享保内検後の開地は八斗余、損地一石余。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「円村」の意味・わかりやすい解説

円村
えんそん
Runddorf

広場や草地などを中心とし,これを囲んで民家が環状に立並び,ほぼ円形集落形態を示す集落。主として北ヨーロッパに分布するが,特にドイツ東部からポーランドにかけて発達している。この地方は中世スラブ族の植民地域にあたり,従来はこれをスラブ族の防備のための民族的所産であるという説があったが,近年の研究の結果,スラブ族の植民地域でないところにも分布することが判明した。円村は計画的に設定された集落で,土地割は集落の中心の広場や草地から放射状に施されている。各戸は宅地の背後に続く耕地と山林をほぼ平等に保有し,中心の広場や草地を共同使用して,農牧生活を営むのが特色である。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「円村」の意味・わかりやすい解説

円村
えんそん
Runddorf ドイツ語

ドイツ、ポーランドや北ヨーロッパの一部に古くからみられる環状形態の農業集落。環村ともいう。広場や、牧畜に使われる草地などの共有地の周囲に、民家が環状に建ち並び、放射状に地割が施され、各農家は自宅の背後の土地を耕す。かつてスラブ民族起源説も行われたが、近年では、牧畜を営むための必要性から生じたとされている。

[中田榮一]

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百科事典マイペディア 「円村」の意味・わかりやすい解説

円村【えんそん】

環村とも。ドイツ東部のスラブ系諸民族などに多く見られる円形または楕円形の農業集落。中央に村の共有地で牧場に使われる広場または草地があり,その周囲に環状に集まった民家の外側に放射状の土地割で耕地が作られる。

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世界大百科事典(旧版)内の円村の言及

【村】より

…すなわちその一つは,ほぼ30戸前後の農民家屋敷がおのおの自家の菜園地を伴いながら,〈むら〉の中心部に核をなして密集し,その周囲を垣根や柵で取り囲み,その外側にいくつかの共同耕区がひろがり,さらにその外側に森林,牧草地,荒蕪地などの入会地をもつという,三圃農法に最も適合的な〈集村Haufendorf〉であり,第2は10戸前後のルーズなまとまりで,共同の入会地や耕区もあるが,各戸別の耕地も不規則に散在する〈小村〉,すなわちゲルマン地域で〈ワイラーWeiler〉,イギリスで〈ハムレットhamlet〉などと呼ばれる形態であり,第3のタイプは,家屋敷の周囲に各戸の菜園地やブロック状の大小さまざまな耕地,あるいは牧草地などをもち,一戸一戸が分散して,団体規制のきわめてゆるい〈散村Einzeldorf〉である。このほか,干拓や開墾により計画的に道路に沿って規則正しく各戸の家屋敷,菜園地,耕地,牧草地などをもつ〈街村Strassendorf〉,あるいはスラブ系諸族の地域にみられる〈円村Rundling,Runddorf〉などのタイプがあるが,西ヨーロッパの主要な集落形態は,上述の三つと考えてよい。
[集村の成立と普及]
 この3形態の起源または成立事情につき,従来の学説は,これを民族性と関係づけ,集村をゲルマン人に固有のもの,散村または小村をケルト系民族の遺制ないしは中世中期以降における開墾によるものとみなしてきた。…

※「円村」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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