翻訳|discus throw
陸上競技の投擲(とうてき)種目の一つ。古代オリンピックからの歴史をもつ競技である。当時は、長方形の台上からすくいあげるように投げたが、現在は、直径2.5メートルのサークルの中で静止の状態からターンをし、遠心力を利用して円盤を投げ距離を競う。危険防止のため、サークルの周りには繊維の紐(ひも)、あるいは鋼製のワイヤーでつくられた網目の囲いをつけることが義務づけられている。
サークルの中心から前方の左右34.92度の角度の延長ライン内に落ちた円盤だけが有効試技で計測の対象となり、ライン上を含めて他はファウルとなる。選手は円盤が地上に落下するまでサークルを出てはならない。さらに投げ終わったあと、サークルの後ろ半分から退出しないとファウルとしてその投擲は無効となる。8人を超える選手が出場するときは、初めの3回の成績で上位8位(ベスト8)を残し、さらに3回投げ、合計6回のなかで最高の記録を選び順位を決める。6回を終わってもベストが同記録の場合は、当該者同士の2番目の記録、3番目の記録、といったぐあいに比べ合い、その記録のよいほうを上位とする。それでも決まらない場合は同順位とする。参加選手が多数のときは予選を行う。記録は、円盤の落下地点の痕跡(こんせき)のうち、サークルにもっとも近い箇所からサークルの中心をつなぐ線上で、サークルの内側までを計測する。距離は1センチメートル単位で記録し、端数は切り捨てる。
円盤の胴体は木またはその他の適当な材質でできており、周囲は金属で縁どりされ、縁枠の角は丸い。一般男子用は直径約22センチメートル、重さ2キログラム以上、高校・ジュニア男子用は直径約21センチメートル、重さ1.75キログラム以上、女子用は直径約18センチメートル、重さ1キログラム以上となっている。
体を軸とし、ターンによって生まれる遠心力を利用する競技のため、長い腕、速くて強いターンを促す脚力、強い腕力をもつ選手が有利となる。
オリンピックでは、男子は1896年のアテネ大会から、女子は1928年のアムステルダム大会から正式種目となり、アル・オーターAl Oerter(本名はアルフレッド・アドルフ・オーター・ジュニアAlfred Adolf Oerter Jr.。アメリカ。1936―2007)が1956年のメルボルン大会から4回連続優勝した。
2020年1月時点での世界記録は、男子はユルゲン・シュルトJürgen Schult(旧東ドイツ。1960― )の74メートル08センチ(1986年)、女子はガブリエレ・ラインシュGabriele Reinsch(旧東ドイツ。1963― )の76メートル80センチ(1988年)。
パラ陸上(障害者陸上競技)の座位競技者は、直径2.135メートル~2.5メートルのサークル内に設置した投擲台から競技を行う。投擲台は各辺30センチメートル以上の四角形で高さは75センチメートル以内。投げるときに体が浮かないようにベルトなどで固定し、上半身だけで投げる。尻(しり)が浮くと試技は無効となる。投擲台には握り棒を取り付けてもよい。視覚障害の全盲クラスなどでは、アシスタントが1人付き、サークルへの誘導や投げる方向を声や手拍子で伝えることができる。パラリンピックでは、男女ともに1964年(昭和39)の東京大会から実施された。
[加藤博夫・中西利夫 2020年2月17日]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…古代オリンピックは,以後4年に1度のペースで実に1000年以上も続き,現在の陸上競技種目に相当するものが加わっていった。たとえば第14回大会(前724)には往復競走(2スタディオン)が加わり,さらに長距離競走(7~24スタディオン),五種競技(短距離,幅跳び,円盤投げ,槍投げ,レスリング)などが登場している。古代ギリシアのつぼ絵などから推察すると,幅跳びは石または鉛でつくったおもりを両手に握ってはずみをつける跳び方,円盤は石や青銅でつくったもの,槍は重心近くにつけた革ひもに指を通して投げるなど,現在と形は多少異なるものの,基本的には同じである。…
※「円盤投げ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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