写し絵(読み)ウツシエ

デジタル大辞泉 「写し絵」の意味・読み・例文・類語

うつし‐え〔‐ヱ〕【写し絵】

景色人物などを描き写した絵。写生画
「是は誠の鯉、―とはさらさら思はれず」〈浄・双生隅田川
映し絵

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精選版 日本国語大辞典 「写し絵」の意味・読み・例文・類語

うつし‐え‥ヱ【写絵・映絵】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 風景、人物、物語の内容、他の絵画などを写しとった絵。写生画、肖像画、模写画など。
    1. [初出の実例]「うつし絵の扇がやつや是れならん月はうなばら雪はふじのね」(出典:廻国雑記(1487))
    2. 「是は誠の鯉、写し絵とはさらさら思はれず」(出典:浄瑠璃・双生隅田川(1720)二)
  3. ガラスに描いた絵を灯火によって映し出すもの。江戸時代、オランダより、エキマン鏡が日本にもたらされ、江戸の染物上絵職亀屋熊吉(池田〈三笑亭〉都楽)が改良を加え考案した。享和一八〇一‐〇四)頃から始まり、明治末まで寄席などで演じられた。かげえ。幻灯
    1. 写し絵<b>②</b>〈風俗画報〉
      写し絵風俗画報
    2. [初出の実例]「外(ほか)見人(みて)居ずはと写しゑでおやし」(出典:雑俳・末摘花(1776‐1801)三)
    3. 「ある夕雨そぼふりて物さびしく、当世のうつし絵をながめて」(出典:黄表紙・色競手管巻(18C後‐19Cか)三)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「写し絵」の意味・わかりやすい解説

写し絵
うつしえ

動く幻灯のこと。江戸の寄席(よせ)芸人として著名な、うつしゑ都楽(とらく)が創始者である。享和(きょうわ)(1801~04)のころに都楽が、オランダのエキマン鏡という眼鏡を種にしてビードロ(ガラス)に彩色の絵をかき、自由自在に動かして見せたことが『武江年表』にみえる。関根黙庵(もくあん)著『講談落語今昔譚(たん)』には、都楽の最初の寄席出演が1803年(享和3)3月で、写し絵が大評判となり、1852年(嘉永5)に73歳で没したことが記されている。写し絵や影絵は江戸時代の大衆芸能としては異色のものだが、明治時代には両川亭船遊(りょうかわていせんゆう)、玉川文楽などがその芸を継承し、2代目玉川文楽は写し絵の伝統を昭和の時代にまで伝えた。

[関山和夫]

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