改訂新版 世界大百科事典 「分散硬化」の意味・わかりやすい解説
分散硬化 (ぶんさんこうか)
dispersion hardening
結晶素地中に,たとえば酸化物や析出物のような固溶しない第二相粒子が存在することによって起こる硬化をいう。したがって,第二相粒子が形成される様式にはよらないが,とくに析出によって形成された第二相粒子の分散による硬化を析出硬化と呼ぶ。素地中に第二相粒子が存在するものは,ふつう素地よりも強いため転位運動の障害となる。このため転位の運動を起こすには非常に大きな応力を加えなければならず,材料は高い降伏強さを示す。分散粒子の間隔が細かい場合はなおさらである。
また,分散粒子は転位の発生源として働き,このため素地そのものが加工硬化を起こす。分散強化合金は金属の粉末と酸化物,窒化物などの粒子を混合焼結してつくられる。
執筆者:岸 輝雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報