分散硬化(読み)ぶんさんこうか(その他表記)dispersion hardening

改訂新版 世界大百科事典 「分散硬化」の意味・わかりやすい解説

分散硬化 (ぶんさんこうか)
dispersion hardening

結晶素地中に,たとえば酸化物や析出物のような固溶しない第二相粒子が存在することによって起こる硬化をいう。したがって,第二相粒子が形成される様式にはよらないが,とくに析出によって形成された第二相粒子の分散による硬化を析出硬化と呼ぶ。素地中に第二相粒子が存在するものは,ふつう素地よりも強いため転位運動の障害となる。このため転位の運動を起こすには非常に大きな応力を加えなければならず,材料は高い降伏強さを示す。分散粒子の間隔が細かい場合はなおさらである。

 また,分散粒子は転位の発生源として働き,このため素地そのものが加工硬化を起こす。分散強化合金金属粉末と酸化物,窒化物などの粒子を混合焼結してつくられる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「分散硬化」の意味・わかりやすい解説

分散硬化
ぶんさんこうか
dispersion hardening

異質の微細粒子が分散しているために生じる合金の強化。合金中から熱処理により析出する異相粒子による析出強化と、本質的には溶け合わない素材どうしを焼き固めて得られる分散強化とがある。アルミニウム合金一種であるジュラルミンの硬化は前者の例である。この種の硬化材料の強さは、その材料をある温度以上に加熱すると急激に低下してしまう。また長時間やや温度の高い場所で使用しても、その強度を失う。後者の例としてはアルミナ酸化アルミニウム)粒子を数%含むアルミニウム合金(たとえばSAP)がある。これはアルミニウム粉(表面は酸化されて薄いアルミナとなっている)を高温で焼結、押出し加工した材料で、アルミナは微細な粒子となって材料全体に分布している。この材料の強さはアルミニウムの融点までほとんど変わらない。

[及川 洪]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android