宮崎県の民謡。同県高千穂地方では、野山に生えているササやカヤなどを晩秋に刈り取り、よく干してから家の屋根を葺(ふ)き、また山野の雑草を刈り取って乾燥させ、牛馬の冬場の飼料にしてきた。この作業を刈干し切りといい、『刈干切唄』はその労作唄である。山の斜面で柄(え)の長い鎌(かま)を振り回しながら歌ったり、ササやカヤそれに雑草を牛の背に乗せて綱を引きながら歌ったりしてきた。その作業の内容から、唄はおのずと緩いテンポになっている。高千穂地方で歌われている陽旋法のものと、広く歌われている陰旋法のものと2通りの唄がある。『日向(ひゅうが)追分』ともよばれているが、本来の追分節とはまったく関係がない。
[斎藤 明]
…一般には奥羽山脈を横断する鹿角(かづの)街道および仙北街道の《沢内(さわうち)牛追唄》(田舎なれどもサアーハエー南部の国はヨー 西も東もサアーハエー金(かね)の山コーラサンサエー ハーラヨーパアパアパッパー)がよく歌われている。日向(宮崎県)の《刈干切(かりぼしきり)唄》と同旋律の哀音嫋嫋(じようじよう)たる中に落着きと品位のある非常に洗練された歌である。内陸から米,炭などを運び,海岸から塩や海産物を運ぶ牛方によって歌われたものだが,牛方は2晩も3晩も道中に野宿しながら悠々と山坂を越えて行ったものだという。…
※「刈干切唄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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