(読み)ボウ

デジタル大辞泉 「茅」の意味・読み・例文・類語

ぼう【茅】[漢字項目]

人名用漢字] [音]ボウ(バウ)(漢) [訓]かや ち ちがや
イネ科の草の名。チガヤ。「茅茨ぼうし
かやぶきの。粗末な。「茅屋茅舎茅門
[難読]茅萱ちがや白茅ちがや茅渟鯛ちぬだい茅花つばな茅蜩ひぐらし

かや【×茅/×萱】

屋根をふく材料とする草。イネ科のススキチガヤカヤツリグサ科スゲなどの総称。 秋》「―の穂のおさなき月を眉の上/楸邨
[類語]刈萱雌刈萱

ち‐がや【×茅/××萱/白茅】

イネ科の多年草。原野に群生し、高さ約60センチ。晩春、葉より先に「つばな」とよぶ円柱状の花穂をつける。根茎を漢方で茅根ぼうこんといい、利尿・止血薬とする。しげちがや。 秋》すごすごと日の入る山の―かな/紅緑

ち【×茅】

チガヤの古名。
浅茅原に足踏み心ぐみが思ふ児らが家のあたり見つ」〈・三〇五七〉

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精選版 日本国語大辞典 「茅」の意味・読み・例文・類語

かや【茅・萱】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 屋根を葺(ふ)くのに用いるイネ科、カヤツリグサ科の大形草本の総称。主としてススキ、チガヤ、スゲなどが用いられる。茅根。茅草。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「爾に即ち其の海辺の波限(なぎさ)に鵜の羽を以ちて(かや)と為て産殿を造りき。〈略〉〈波限を訓みて那芸佐と云ふ。葺草を訓みて加夜(カヤ)と云ふ〉」(出典:古事記(712)上)
    2. 「取り葺ける草(カヤ)の噪き〈略〉なく」(出典:延喜式(927)祝詞(九条家本訓))
  3. すすき(薄)」の異名
    1. [初出の実例]「芒(カヤ)すすき 地筋(カヤ)(〈注〉ヂヂョ)、異名菅根、土筋、菅茅、黄茅」(出典:八丈実記(1848‐55)土産)

茅の語誌

( 1 )元来はのように総称だったので、「延喜式・祝詞」に見られるように「草」をあてることもあった。「茅」は「ち」で、「ちがや」を指すが、「ちがや」は屋根をふく草の代表的なものなので、「かや」にあてられた。
( 2 )「萱」は本来、ユリ科の植物カンゾウ、一名ワスレグサで、「かや」の意に用いるのは誤り。「和名抄」「名義抄」などに「かや」とよむ文字は「萓」。字形が似ているところから、後世誤ったもの。


ち‐がや【茅・茅萱・白茅】

  1. 〘 名詞 〙 イネ科の多年草。各地の草地荒地に群生する。高さ約六〇センチメートル。葉は線形で先がとがる。晩春、葉に先だって白い絹状毛を密生した長さ一〇~二〇センチメートルの円柱形の花穂を出す。花穂を「つばな」または「ちばな」といい、古く火口(ほくち)に用いた。根茎は利尿剤・止血薬などに使用。「千(チ)」のカヤの意で、叢生するさまからこの名がある。漢名、白茅。ち。ふしげちがや。しげちがや。《 季語・秋 》

▼ちがやの花《 季語・春 》

  1. [初出の実例]「天(あめ)なるや神楽良(ささら)小野に茅草(ちがや)刈り草(かや)刈りばかに鶉(うづら)を立つも」(出典:万葉集(8C後)一六・三八八七)
  2. 「夕風や茅萱折ふす霜のさへ」(出典:俳諧・春鴻句集(1803頃)冬)

かえ【茅】

  1. 〘 名詞 〙 「かや(茅)」をいう上代東国方言。
    1. [初出の実例]「かしこきや命(みこと)かがふり明日ゆりや加曳(カエ)が共(むた)寝む妹(いむ)無しにして」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三二一)

ち【茅】

  1. 〘 名詞 〙 植物「ちがや(茅)」のこと。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「敦く茅(チ)(すすき)を敷きて」(出典:日本書紀(720)仁徳六二年是歳(北野本訓))

ちい【茅】

  1. 〘 名詞 〙 植物「ちがや(茅)」の異名。
    1. [初出の実例]「始めて牙を生ずる茅(チイ)草或は小草の花」(出典:蘇悉地羯羅経寛弘五年点(1008)上)

かや【茅・加舎・賀陽】

  1. 姓氏一つ

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「茅」の読み・字形・画数・意味


人名用漢字 8画

(旧字)
9画

[字音] ボウ(バウ)
[字訓] かや・ちがや・かやぶき

[説文解字]

[字形] 形声
声符は矛(ぼう)。〔説文〕一下に「なり」、次条のに「なり」とあって互訓。〔左伝、僖四年〕「爾(なんぢ)の貢する(はうばう)入らず、以て酒を縮(した)む無し」とあり、祭祀の酒をこすのに用いた。〔周礼、天官、甸師〕はその茅を供することを掌る。また〔詩、召南、野有死麕(やゆうしきん)〕「白もて之れをむ」は、犠牲を包むこと、〔詩、(ひん)風、七月〕「晝は爾(なんぢ)于(ここ)に(かや)かれ」は、屋根をくのに用いる。

[訓義]
1. かや、ちがや。
2. かやかる、かやふく、かやぶき。

[古辞書の訓]
〔新字鏡〕 知(ち)〔和名抄〕 知(ち)〔名義抄〕 チイ

[熟語]
茅庵・茅宇・茅簷・茅屋・茅花・茅軒・茅柴・茅斎・茅茨・茅司・茅室・茅社・茅舎・茅・茅縮・茅・茅障・茅旌・茅・茅亭・茅店・茅土・茅棟・茅堂・茅馬・茅・茅・茅・茅寮・茅廬
[下接語]
屋茅・茅・結茅・荒茅・香茅・貢茅・黄茅・衡茅・茅・茅・茅・神茅・茅・積茅・茅・草茅・把茅・白茅・抜茅・表茅・包茅・茅・霊茅

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

動植物名よみかた辞典 普及版 「茅」の解説

茅 (チガヤ・チ)

学名:Imperata cylindrica
植物。イネ科の多年草,薬用植物

茅 (カヤ)

植物。イネ科の多年草,園芸植物。ススキの別称

茅 (カヤ)

植物。笠菅・刈萱などの総称

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

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