県の北西部、五ヶ瀬川上流域に位置する現
高橋氏の入封に対しては中世初頭より高千穂地方の豪族として強い勢力を誇っていた三田井氏が、一族・一統を統率して抵抗した。文禄元年(一五九二)には敗北したが三田井氏の影響はその後も残り、高橋氏をはじめとする歴代の延岡藩主は高千穂地方の支配に心を砕くことになる。とくに中世以来の有力農民が任命されたと考えられる小侍・郷足軽の存在はこの地方特有のものとされる。元禄一一年(一六九八)の高千穂小侍面附(矢津田家文書)には小侍四四・郷足軽一〇〇とあり、牧野氏から内藤氏への引継文書である延享四年(一七四七)の高千穂小侍足軽并川内名村小侍給地給米帳(内藤家文書)では小侍四九(うち川内名村一)・足軽九三とある。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
宮崎県北部、西臼杵郡(にしうすきぐん)にある町。1920年(大正9)町制施行。1956年(昭和31)田原(たばる)村、岩戸(いわと)村の大部分と合併、さらに1969年上野(かみの)村を編入。『和名抄(わみょうしょう)』には臼杵郡に智保(ちほ)郷名がみえ、荘園(しょうえん)資料では高千尾(たかちお)と記されている。五ヶ瀬川(ごかせがわ)の上流部にあり、九州山地内であるが阿蘇(あそ)溶岩が広く分布、台地面がかなり広い。また、五ヶ瀬川はこの溶岩を侵食して高千穂峡(国指定の名勝・天然記念物)など深い峡谷を形成。国道218号、325号、九州中央自動車道が通る。天孫降臨神話の地で、記紀の二上峯(ふたがみのみね)、高天原(たかまがはら)、天岩戸(あまのいわと)などの地名がある。近世は延岡藩(のべおかはん)領。中心地三田井(みたい)は西臼杵郡の商業・観光の拠点。祖母傾国定公園(そぼかたむきこくていこうえん)に含まれ、天岩戸神社、高千穂神社があり、伝統行事の高千穂の夜神楽(よかぐら)は国指定重要無形民俗文化財。また高千穂神社にある鉄製の狛犬(こまいぬ)は国指定の重要文化財。面積237.54平方キロメートル、人口1万1642(2020)。
[横山淳一]
『『高千穂町史』(1973・高千穂町)』▽『『高千穂町史 郷土史編』(2002・高千穂町)』
宮崎県北西部,西臼杵郡の町。人口1万3723(2010)。五ヶ瀬川上流域に位置し,北は祖母山を境に大分県に接する。日本神話の天孫降臨の地とされ,天岩戸神社,高千穂神社があり,天真名井,国見丘など神話にちなむ地名が多い。中世は三田井氏が中山城を築いて支配したが,近世は延岡藩領であった。中心地の三田井は高千穂鉄道(2007~08年に全線廃止),国道218号,325号線が通る交通の要衝で,農林業とともに商業が盛ん。九州山地にあって町域の大半は山林で占められるが,五ヶ瀬川本支流沿いに耕地が開かれている。米,タバコ,野菜,シイタケなどを産し,近年は夏菊栽培が盛んで,畜産も行われる。岩戸地区の土呂久(とろく)鉱山は1962年休山したが,亜ヒ酸鉱害が問題となった。高千穂峡などの景勝地や高千穂夜神楽など有形,無形の文化財が多く,民謡《刈干切歌》のふるさとである。
執筆者:萩原 毅
日本神話にみえる神話上の地名。記紀神話で瓊瓊杵(ににぎ)尊(ホノニニギノミコト)が天降(あまくだ)ったという峰。また高く秀でた山,あるいは豊かな稲穂の山の意の普通名詞でもある。神話には〈日向(ひむか)の高千穂〉とあり,日向臼杵郡智保郷や日向と大隅にまたがる霧島山などが比定されてきた。しかし記紀の〈日向(ひむか)〉は日に向かった光明の地の意味でもある。したがってこれは,瑞穂(みずほ)の国の初代君主〈日の御子〉ホノニニギが天降るにふさわしい神話的地名と解釈すべきである。これが九州日向にひきつけられたのは,そこを本拠とする隼人(はやと)の征服を神話的に語るためであった。
→天孫降臨神話
執筆者:倉塚 曄子
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…平定された葦原中国には,あらためて日神の孫瓊瓊杵(ににぎ)尊が降されることになる。皇孫はアマテラスの神言によって支配者的資格を授かったうえ,天忍日(あめのおしひ)命,天津久米(あまつくめ)命(大久米命)を先導とし,天児屋(あめのこやね)命,太玉(ふとたま)命,天鈿女(あめのうずめ)命,石凝姥(いしこりどめ)命,玉祖(たまのおや)命ら諸神を伴として日向(ひむか)の高千穂の〈くじふる嶽〉に天降る。そして日向の国に宮居を定めた。…
※「高千穂」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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