改訂新版 世界大百科事典 「初誕生」の意味・わかりやすい解説
初誕生 (はつたんじょう)
初誕生日の祝い。日本の庶民の伝承では誕生日の祝いは,ほとんど生後満1年の初誕生に限られていた。初誕生の祝いは地方によってムカワリ,ムカイドキ,タイジョウ,タンカヨイなどとよび,誕生餅をついて,産婆や親戚,近隣を招いて祝う。満1年ころは立歩きができるようになり,飛躍的な成長をみせる時期なので,ハツアルキを中心にしたさまざまな儀礼が行われている。この日つく餅を力餅,タッタリ餅,立ち餅,ブッサリ餅などという。生児が初誕生前に歩きだすのを嫌う風が全国的にあり,誕生前に歩きだした子には,一升餅を父親の帯またはふろしきに包んで背負わせわざと転ばせる。一升餅を背負っても歩くときは転ぶまで小餅をふやしたり,餅を子の足にぶっつけたり,餅で体をたたいたりして倒す。早く歩く代取子(だいとりご)は家を早く離れる,親の足を取る,一生運が悪いなどといってとくに嫌われた。九州地方では早く歩く子にはモチフミといって,誕生餅を平たくのして,その上を子にぞうりをはかせて踏ませ,足がよく地につくように,じょうぶに育つようにと願った。この餅はあとで親戚や近所へ配る。一方,初誕生になっても立てない子は,箕の中に立たせてフクデ餅(鏡餅)を子の背中へ投げつける。こうすると早く力がついて一人歩きができるようになるという。また初誕生祝のときに,箕の中に男児には筆,そろばん,本,女児にはものさし,はさみ,糸巻きなどを並べて,子どもがはじめに取るものによって子の将来を占うエラビドリの風も西日本を中心にひろく行われていた。
執筆者:大藤 ゆき
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報