制海権(読み)せいかいけん(英語表記)command of the sea; control of the sea

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

制海権
せいかいけん
command of the sea; control of the sea

戦時,軍事力によって一定海域自国による行動の自由を確保し,かつ管制しうる状態をいう。海洋国においては,その確保は死活的に重要であり,大陸国においては必ずしもそうではなく,海洋国の海を破壊するほうにより大きな利益を得る場合が多い。平時には公海は自由であり,制海なるものは存在しないが,戦時においては政治的影響をもたらす。制海は海上のみならず,空および海中の管制を伴わなければならず,したがって,その獲得,管制には,海軍力 (海上航空兵力を含む) ばかりでなく,陸上航空兵力や陸上兵力の協力を必要とする。

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百科事典マイペディアの解説

制海権【せいかいけん】

戦時における交戦全海域または一部海域の軍事的支配権。その確立により敵艦船の航行が不可能になり,味方艦船の航行の自由が保障される。従来は戦勝のための必要な条件であったが,近来航空機の発達により制海権を得るためには制空権の獲得が必要となった。現在では海上優勢という言葉も使用される。→海軍

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世界大百科事典 第2版の解説

せいかいけん【制海権 control of the sea】

戦時あるいは非常事態に際し,自国の必要とする海域を自由に使用するとともに,敵に対しては自由な使用を不可能にさせることのできる能力。自国が必要とする海域あるいは海上交通路を自由に使用でき,しかも敵の利用を拒むことができ,戦略的にみて満足できる状態にあるとき制海が確保あるいは確立されたという。制海は本来,完全あるいは絶対優位の状態に達することが理想であるが,兵器技術が進歩し,航空機,ミサイル,人工衛星等が発達しつつある現在では,いかなる国でも限られた一定の海域を一定期間支配できる(海上優勢sea superiorityという)程度である。

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大辞林 第三版の解説

せいかいけん【制海権】

一定海域を海軍力などの兵力により支配しうる権力。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

制海権
せいかいけん
control of the sea

自国にとって必要な海域を自由かつ排他的に使用しうる能力もしくは状態。海洋は陸地と違って占領することも常続的支配もできない「広大な共有地」(マハン)なので自国の海上交通路を確保し、敵国の使用を妨げるには、一定の海域を必要な期間管制することが不可欠になる。ギリシア時代すでに「波濤(はとう)を制するものは世界を制す」のことばがあり、大航海時代のイギリスでは海賊紳士ウォルター・ローリー卿(きょう)が「海を支配するものは通商を支配し世界を支配する」と制海の意義を説いているが、制海権の帰趨(きすう)が国際政治の決定要素の一つとみなされるようになったのは、1890年にアメリカ人A・T・マハンが『海上権力史論』The influence of sea power upon historyを発表し、国家の興隆と制海権確立との因果関係を論証してからのことである。マハンの教義は「軍艦旗は商船旗に先行しその嚮導(きょうどう)者となるべし」という大海軍主義に結晶し、20世紀前半の列国の海軍政策に大艦巨砲と決戦艦隊思想の形で持ち込まれた。しかし洋上決戦によって海洋支配が獲得できた時代は日本海海戦をもって終わり、以後は潜水艦や航空機の登場で制海の意義と範囲はしだいに限定的、一過的なものに縮小されていった。さらに第二次世界大戦後の軍事戦略にあっては、戦略核兵器が潜水艦に搭載されて海洋に移動し、敵国の首都にねらいをつけるという事態が生じたほか、海軍戦闘もミサイルや電子戦を含む複雑なものに変化したため、古典的意味での制海権は今日ほとんど通用しなくなっている。[前田哲男]

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精選版 日本国語大辞典の解説

せいかい‐けん【制海権】

〘名〙 平時・戦時を問わず、常に優越した海空軍兵力をもって軍事・通商・航海など海上の諸権益を確保できる海上支配権。海上権。
※社会百面相(1902)〈内田魯庵〉矮人巨人「南海蓬莱の制海権を喪ふて孤立し」

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