機動部隊(読み)キドウブタイ

デジタル大辞泉 「機動部隊」の意味・読み・例文・類語

きどう‐ぶたい【機動部隊】

機動性の高い部隊。陸軍では、戦車・装甲車などを装備した強力な部隊。海軍では、航空母艦中心巡洋艦駆逐艦で編制した高速攻撃部隊。

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精選版 日本国語大辞典 「機動部隊」の意味・読み・例文・類語

きどう‐ぶたい【機動部隊】

  1. 〘 名詞 〙 軍隊で、機を見て運用行動できるよう編成した部隊。海軍では航空母艦を中心とし、航空戦をおもな任務とする攻撃部隊。
    1. [初出の実例]「『土井君、タスク・フォースってのは何と訳すのだ?』『前の戦争中はアメリカの海軍用語で、たしか機動部隊と訳したと思いますが……』」(出典:広場の孤独(1951)〈堀田善衛〉一)

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改訂新版 世界大百科事典 「機動部隊」の意味・わかりやすい解説

機動部隊 (きどうぶたい)

日本では,海軍の任務部隊task force(特定の任務のため臨時に編成される部隊)の一つである空母戦闘群を一般に機動部隊または空母機動部隊と呼んでいる。空母を中心に巡洋艦,駆逐艦などの高速艦艇によって編成され,航空戦を主任務として広域の海洋において柔軟かつ強力な作戦を遂行できるのが特色である。機動部隊が出現したのは第2次世界大戦からであり,まず旧日本海軍,次いでアメリカ海軍が本格的に航空攻撃を主任務とした部隊を編成して運用したが,旧日本海軍ではその中心的存在とはなりえなかった。一方,アメリカ海軍は大艦巨砲に代えて空母機動部隊を任務部隊の中心とし,第2次大戦以降もこの改善発展に努めている。海上自衛隊では,任務部隊のうち,主力護衛艦などで編成され機動的に運用される部隊を,他の任務部隊と区別するため機動部隊と呼んでいる。

 陸上部隊においても,近時機械化が進み,戦場における機動能力または遠距離の戦場への展開能力が高まったので,機動部隊という名称が使用されるようになった。戦場の要点に先遣突進させ,あるいは敵の側方に迂回行動させる機械化部隊を機動部隊と呼ぶことが多く,固有のヘリコプターによって作戦できる戦闘部隊は空中機動部隊と呼ばれる。

 なお,警察においても機動的に運用される部隊が創設され,機動隊と呼ばれている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「機動部隊」の意味・わかりやすい解説

機動部隊
きどうぶたい
task force; mobile troops

本来は陸軍の機械化部隊のように,機動力に富む部隊をさしたが,海軍では一定の区域にとらわれず自由に行動する,持続力,速力にすぐれ,主として航空母艦 (空母) を基幹とする特別任務部隊をさすようになった。 1941年に日本で世界にさきがけて空母集中用法が採用され,空母6隻を中心とする第1航空艦隊が編成された。アメリカ海軍では第2次世界大戦開戦とともに,日本の第1航空艦隊が,真珠湾からセイロンまで航行して大きな戦果をあげたのに影響されて,空母が海戦の主役となったことを認識し,数隻の空母を中心とし,戦艦,巡洋艦,駆逐艦によって守られる高速の機動部隊を編成した。戦争中に,海上補給の技術も発達したので,通常 70日間航海できた。 45年2月に東京を空襲したアメリカ機動部隊を例にとれば,16隻の空母を基幹として4群に編成し,戦艦8隻,巡洋艦 17隻,駆逐艦 81隻,艦載機 1200機以上から成っていた。現在空母機動部隊を十分に活用しているのはアメリカ海軍で,91年の湾岸戦争でもその力を発揮している。イギリス,フランス,ロシア,インド,スペイン海軍も小規模な空母機動部隊を運用している。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「機動部隊」の意味・わかりやすい解説

機動部隊
きどうぶたい
task force

一般には、敵に対して有利な態勢にたつため、背後に迂回(うかい)したり、緊要な地形を占拠したりする能力をもつ部隊をいう。戦車化、機械化されたもの、空中機動、海上機動によるものなどがある。警察にも機動隊がある。海軍用語では、空母を中心として特定任務達成のために編制された部隊のこと。アメリカでいうTF(Task Force)が任務部隊または機動部隊と訳されている。TFは艦隊の次級部隊で、たとえば第7艦隊にも、いくつかのTFがある。このうち空母を含むものが機動部隊である。第二次世界大戦で日本海軍は、真珠湾攻撃以後、空母を中心とし巡洋艦、駆逐艦などで編制され、高速で機動力に富み、航空戦を主任務とするものを機動部隊とよんだ。現在の空母機動部隊は、一昼夜で1000キロメートル前後の機動力をもっている。

[藤井治夫]

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百科事典マイペディア 「機動部隊」の意味・わかりやすい解説

機動部隊【きどうぶたい】

本来は歩兵部隊に対し機動性を主とした戦闘部隊をさし,陸軍では機械化部隊,海軍では航続力・速力のすぐれた特殊任務の部隊をいう。第2次大戦で日本海軍は,航空母艦を主として,これに援護の高速戦艦,巡洋艦などを配した部隊を機動部隊あるいは空母機動部隊と呼び,航空戦を主任務とした。米国の有力な航空母艦群を中心とする艦隊もこの名で呼んだ。
→関連項目空軍大艦巨砲主義

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世界大百科事典(旧版)内の機動部隊の言及

【海軍】より

…軍艦に対する航空機の威力は,真珠湾攻撃マレー沖海戦(1941)で決定的に実証された。艦隊の編成も主力艦中心から航空母艦中心の機動部隊へとしだいに改編され,太平洋では航空基地の争奪戦が日米間で激しく展開した。前線と銃後の区別が失われ,空襲による生産力破壊と,機雷や潜水艦を併用した補給封鎖が勝敗を決した。…

※「機動部隊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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