前浜(読み)まえはま(その他表記)foreshore

翻訳|foreshore

日本歴史地名大系 「前浜」の解説

前浜
まえはま

現在の由比ゆいガ浜、またはさかした海岸をいう。浜地はまじ浜面はまおもてなども前浜をさすと思われる。「吾妻鏡」建久五年(一一九四)一一月二一日条に「於御霊前浜千番小笠懸」とあるのは坂ノ下御霊ごりよう神社の前浜ということであるが、同書建保三年(一二一五)八月一八日条の「午尅大風、鶴岡八幡宮鳥居前浜顛倒」や元弘三年(一三三三)一二月日の天野経顕軍忠状写(県史二)にいう「前浜鳥居脇」の鳥居は、若宮大路わかみやおおじ浜の大鳥居とみられるから、前浜の範囲は広く由比ガ浜をさすことになる。

「吾妻鏡」には寿永元年(一一八二)六月二〇日条に鶴岡辺りに光るものがあり前浜辺りをさして飛行したという記事を初見に、建暦二年(一二一二)三月一六日条には「前浜辺」を屋地として土屋大学助らの御家人らに分け賜ったこと、建保元年の和田合戦では兵も箭も尽きた和田義盛が前浜辺りまで退いたこと(五月二日条)、貞応元年(一二二二)四月二六日条には前浜や腰越こしごえなどの浦々に死鴨が打寄せられて不吉なため前浜で七座百怪祭を執行したこと、元仁元年(一二二四)五月一三日条には三浦崎や六浦むつら(現横浜市金沢区)・前浜に死んだ多くの大魚が打上げられ、鎌倉の人々はこれから油を採ったこと、安貞元年(一二二七)三月九日条には隠岐院三宮と称する奸謀の族を前浜辺りの民家で生捕ったこと、仁治二年(一二四一)三月一七日条には前浜辺りの人家より出火強風甘縄あまなわ山麓まで燃広がり数百軒が被災したことなどが知られる。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

海の事典 「前浜」の解説

前浜

砂のような可動性の堆積物で覆われた海岸を一般に浜と言うが、その範囲は厳密には干潮水面から満潮水面の少し上、暴風時に海水が来る所までを指す。浜の上 端が海岸線である。浜はさらに、満潮水面に波の遡上する高さを加えた位置を境に、それより上を後浜、それより下を前浜と呼ぶ。浜をより沖側まで取り、可動 性堆積物が存在する限界までを指すことがあるが、この時前浜より沖、砕波帯までを内浜、それより沖を外浜と言う。 (永田

出典 (財)日本水路協会 海洋情報研究センター海の事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の前浜の言及

【海岸】より

…高潮線より内陸側も波浪,とくに暴風時の波浪によって影響を受けるので,低潮線と波浪の作用の及ぶ陸の限界の間を海浜sea shoreまたは単に浜shoreとよぶ。海浜は前浜(低潮線と高潮線の間)と後浜(高潮線より陸側)に区分され,後浜の陸側の限界を広義の海岸線shore lineまたは沿岸線coastlineとよぶ。海岸は,海岸線(広義)より海側の陸地(海浜)を限定して指す場合と,海浜とその背後の海食崖,砂丘,潟,湿地など,海の作用が影響する陸地を広く指す場合とがある。…

※「前浜」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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