陸地と海面の境界線。汀線(ていせん)ともいう。実際は,岸に打ち寄せる波の一波ごとに海水の到達する限界は変化し,さらに毎日の潮汐の干満によって海面が上下するために,海岸線の位置は刻々とかわる。毎日の潮汐変化に基づき,平均的な高潮位,低潮位に対応する海岸線を,それぞれ高潮線(高潮汀線),低潮線(低潮汀線)と定義するが,その位置も大潮と小潮とでは変化する。また,もう少し時間的・空間的に広い意味で海岸線を定義することがある。低潮線より内陸側の波浪・潮汐の影響が直接およぶ範囲を海浜と呼び,とくに暴風時の波浪の影響がおよぶ内陸側の限界線,すなわち海浜の内陸限界線を広義の海岸線あるいは沿岸線と呼ぶことがある。したがって地図に海岸線を表示する場合,日本の地形図上では満潮時における正射影を水涯線として規定している。海図もほぼ同様で,岸線と称し略最高高潮面で示してある。山などの高さは両図とも東京湾の平均水位面を0mとして,そこからの高さで示す。しかし海図における水深についての0mは各地の略最低低潮面として定められ,この面からの深さを示す。
波浪,潮汐,風などの海の営力が陸地や沿岸海底に働き,海岸線付近での物質の除去(浸食)と付加(堆積)が行われて,広義の海岸線も季節的に,経年的にその位置と形態が変動する。海岸浸食による海食崖の後退,砂質海岸での砂浜の移動,河口の三角州の前進などがその典型である。さらに,地震にともなう地殻変動や地下水のくみあげによる地盤沈下など,陸地が上下に隆起・沈降すると海岸線の位置は変化する。また世界の海洋の海水量の増減による海面そのものの上下によっても海岸線は変化する。海岸線の水平的移動による海域の平面的な拡大を海進,陸域の平面的な拡大を海退と呼ぶ。また陸地の海面に対する相対的な上昇を離水,下降を沈水といい,それぞれにより生じた海岸線を離水海岸線,沈水海岸線という。前者は陸地の隆起または海面そのものの低下によって,後者は陸地の沈降または海面そのものの上昇によっておこる。約1万8000~2万年前の最終氷期の極盛期には,世界的に気候が寒冷で,高緯度地方には大陸氷床が広く発達し,世界的に海面が現在より85~135mも低かった。約1万5000年前からの気候温暖化により大陸氷床が溶解しはじめて地球上の海水量が増大して海面上昇がおこった。海面は約5000~6000年前にはほぼ現在の水準に達した。この現象は世界的な後氷期の海面上昇と呼ばれ,最終氷期の低海面期に形成された海岸の河谷や氷食谷には海が進入し(後氷期海進),溺れ谷が形成された。日本では有楽町海進と呼び,あるいはその最盛期が縄文時代だったので縄文海進とも呼んでいる。したがって,世界の現在の海岸線の形態は,基本的には後氷期の海面上昇によって規制されており,最近5000~6000年間は海面の相対的な安定期であって,その場所の条件に応じた浸食・堆積作用によって地形変化が進行している。そこで,世界の海岸線の形態を,海岸線の変化に着目して記述することが古くから行われている。前進しつつある海岸は,海岸での堆積作用あるいは離水によって陸域が拡大して海退がおこる。後退しつつある海岸は,海岸での浸食作用あるいは沈水によって海域が拡大し海進がおこる。前進も後退もしない海岸は安定しているという。長期的には地殻変動や海面変動が,短期的には自然および人工的な原因による堆積・浸食作用が,海岸線の形態と位置を変化させている。
→海岸
執筆者:米倉 伸之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
陸地と海面の交わる線。汀線(ていせん)ともいう。海面は潮汐(ちょうせき)とともに上下する。潮差の大きい地方では、1日のうちでも周期的に大きく変動する。そのため、高潮時、低潮時の海岸線を、それぞれ高潮海岸線、低潮海岸線、あるいは満潮汀線、干潮汀線とよんで区別する。海岸線は、波による侵食、堆積(たいせき)作用、地殻運動による隆起や沈降運動、海水準変化などによってその位置が変化しやすい。
[豊島吉則]
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