英雄神話(読み)エイユウシンワ

デジタル大辞泉 「英雄神話」の意味・読み・例文・類語

えいゆう‐しんわ【英雄神話】

英雄の生い立ち・行跡ぎょうせきなどを説いた神話。英雄譚えいゆうたん

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精選版 日本国語大辞典 「英雄神話」の意味・読み・例文・類語

えいゆう‐しんわ【英雄神話】

  1. 〘 名詞 〙 神話の、物語的な構成内容を基準とする分類の一つ。英雄を主人公とする一群の神話のうち、特に英雄の生いたち、結婚、怪物退治、他界訪問、遍歴などを説く。

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改訂新版 世界大百科事典 「英雄神話」の意味・わかりやすい解説

英雄神話 (えいゆうしんわ)

創世神話とならぶ神話のもう一つの重要なジャンル。創世神話が世界・人間・文化の起源を語るのに対し,英雄神話は特定の英雄の波乱万丈の生涯を描くのに主眼がある。このような英雄神話が発達したのは旧大陸の古代文明地域とその影響圏であって,ギリシアオイディプステセウスペルセウス,ローマのロムルスゲルマンジークフリート,ケルトのアーサー王,東北アフリカのシルック族のニイカング,ジャワのワトゥ・グヌング,高句麗の朱蒙,日本の素戔嗚尊(すさのおのみこと)や日本武尊(やまとたけるのみこと)などがその代表例である。ランクOtto Rank,ラグラン卿Lord Raglan,キャンベルJoseph Campbellなどが指摘したように,英雄神話の主人公の生涯は大幅に共通している。英雄は王と王妃の息子であるが,誕生前になされた予言のため,生まれると殺されそうになる。この殺害の企ては父親の発意によることも多い。子どもは神かくしにあい養父母に育てられる。成人すると,英雄は未来の王国におもむき,その地の王か巨人あるいは悪竜や怪獣を退治する。英雄は王女と結婚し王となる。彼は謎の死をとげるが,それはしばしば山上においてである。これらのできごとが,英雄の出生,王位の継承,死に関わる話の3群に分かれるので,ラグランは,誕生,成人式,葬儀という人生の三大儀礼との関連を強調した。これに対してランクは,英雄神話はフロイトのいわゆるエディプス複合の反映と考え,少年が無意識のうちに母と結婚し父を処分したいという願望が表れているとした。英雄は矛盾した性格のトリックスター(いたずら者)の側面をもっていることも少なくない。またインド・ヨーロッパ語系諸族のテセウス,ジークフリート,日本の素戔嗚尊などは,戦士的機能を代表する神ないし英雄である。このような英雄が活躍できた,あるいはその記憶をとどめた社会,英雄のきわめて人間的な生涯に共感をもつような社会が,英雄神話を生み,受け入れ,保存し,発展させたのである。
神話
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「英雄神話」の意味・わかりやすい解説

英雄神話
えいゆうしんわ
heroic myths

太古に神々と密接な交渉をもちながら活躍したとされる半神的英雄たちを主人公とする神話。メソポタミアギルガメシュ,ギリシアのヘラクレステセウスペルセウスベレロフォン,ローマのロムルスとレムス,ゲルマンのシグルト,ケルトのクフーリン,インドのラーマなどがその典型で,日本の神武東征やヤマトタケル,神功皇后などの物語も明らかにこの類型に属する。英雄神話の主人公の多くは,母は人間の女だが神を父としており,ヘラクレス,ロムルス,ヤマトタケルのように,しばしば双子で,生後すぐ捨て子にされたり,生命を危険にさらされるが,動物や牧夫などに助けられて,奇跡的に生命をまっとうし,成長すると不思議な武器や馬などを手に入れ,彼に迫害を加えた敵を倒し,また悪竜やそのほかの怪物を退治する手柄を立てて,その餌食となるところを救われた美女と結婚する。冥界や他界の訪問も,ギルガメシュ,ヘラクレス,テセウス,クフーリンやローマのアイネイアス,フィンランドのワイナモイネン,ポリネシアのマウィその他,多くの英雄神話に共通するテーマの一つである。英雄の多くは若死にし,ヘラクレスやロムルスのように,死後昇天し神々の仲間入りをしたとされることもある。記紀にみられるヤマトタケルが死後,巨大な白鳥となって御陵から出て,天に飛去ったという話も,この英雄の死後における昇天のモチーフの変化したものと認められる。このように世界中の英雄神話は,内容的に一致する点が多く,これらの英雄神話に共通する枠組みとモチーフは,たとえばアレクサンドロス大王やペルシアのキュロス王,またイエス・キリストなど,歴史的に実在した人物の伝記にも,しばしば取入れられ,それを英雄神話化する。

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