加冠(読み)かかん

精選版 日本国語大辞典 「加冠」の意味・読み・例文・類語

か‐かん ‥クヮン【加冠】

〘名〙
男子の成人式。奈良・平安時代から中世にかけて、一五歳前後の男子がいわゆる大人として社会慣習に参与しうることを表わすための儀式衣服を改め、髪を結い、冠を着けた。また幼名をやめて烏帽子名(えぼしな)(=元服名実名)を付けた。江戸時代には、前髪をきり衣服の袖を短くつめるなど一般的に簡略化された。ういこうぶり。首服(しゅふく)元服
※続日本後紀‐承和一〇年(843)七月庚戌「喚諸嗣於殿上、令加冠焉」
平家(13C前)一「主上明年御元服、御加冠拝官の御さだめの為に、御直廬に暫く御座あるべきにて」
② 元服の儀式で成人男子(冠者)に冠を着ける役目の人のこと。
兵範記‐久安五年(1149)一〇月一九日「此間加冠右大臣自船着橋下、又駕車被宿所
※鹿苑院殿御元服記(14C末)「加冠以下役人奉行人等着白直垂
③ 元服の儀式で冠を着けること。
※兵範記‐久安五年(1149)一〇月一九日「次入巾子〈略〉次加冠右府起座、経屏風前并冠者後右方等着南円座〈理髪座也〉加冠」

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デジタル大辞泉 「加冠」の意味・読み・例文・類語

か‐かん〔‐クワン〕【加冠】

[名](スル)
昔、男子が元服のときに初めて冠をつけること。また、その儀式。初冠ういこうぶり
元服する人に冠をかぶらせる役。また、その人。ひきいれ。

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普及版 字通 「加冠」の読み・字形・画数・意味

【加冠】かかん(くわん)

元服。〔説苑、脩文〕君子始めて冠するとき、必ずし、禮加冠して、以て其の心を(はげ)ます。~顯令の名を以なり。

字通「加」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「加冠」の意味・わかりやすい解説

加冠
かかん

元服の儀式の際,元服する者に冠をかぶせること。またはその際,冠をかぶせる役をする者。武家の場合は烏帽子親と称された。

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世界大百科事典(旧版)内の加冠の言及

【一字書出】より

…一字拝領とは,これを与えられた臣下から見た行為である。加冠の儀式が形式的にせよ主人の臨席の下に行われるのが本来の形である。1字を与え命名する風習は古くよりあったが,文書として現存する典型的なものには,将軍足利義晴自筆の〈晴〉のみを記し,御内書・添状を伴う折紙がある。…

【元服】より

…〈げんぷく〉ともいい〈元〉は首,〈服〉は着用する意。首服,首飾,冠礼,加冠,初冠(ういこうぶり∥ういかぶり),御冠(みこうぶり),冠ともいう。
[古代]
 冠礼としての成人式は,日本古代では682年(天武11)に規定された男子の結髪加冠の制以後,冠帽着用の風習が普及してからで,国史に見えるものとしては714年(和銅7)の聖武天皇(14歳で元服)の記事が初めとされる。…

※「加冠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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