学識,人格ともにすぐれた,道徳的にりっぱな人物。原義は,一般民衆よりも上位にあって,治政の立場に足る人の称。在位の身分ある為政者をさす。〈野人(やじん)〉あるいは〈小人(しようじん)〉の対。とくに政権の主宰者,首長を〈君主〉ともいい,領土と臣民を保有する主権者の〈国君〉,臣下にたいする〈君王,主君〉をもさす。中国古代にあって,貴族階層の男性,“おっと”への敬称,君子偕老(かいろう)の〈君子〉など,のちの第二人称の〈君(くん)〉〈卿(けい)〉にあたる。才徳を兼ねそなえた人士は,孔子を教祖とする儒家学団の修養目標であった。《論語》には,〈仁〉字と匹敵する100余例の〈君子〉の語が見え,そこでは礼楽文化に身をおき,孝悌秩序をわきまえ,仁・義といった思いやりのある,人として実践すべき積極的な教養を身につけた,士人の〈君子〉の出現をねがっている。つまり新しいタイプの知識階層による政権担当者(のちの士大夫官僚)を目ざした。かくて,儒教道徳の修得者と官位ある為政者との一致を,〈君子〉の理想とする考えが,ながく中国を支配した。
執筆者:戸川 芳郎
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中国において人間類型を示す語。最古の歌謡『詩経』にみえるこの語は種々の意味を示す。(1)身分の高い人。「君子の依(よ)る所。小人の腓(したが)う所」(馬車についていう。采薇(さいび))。(2)夫または夫となるべき男。「君子于(ここ)に役す」(君子于役(うえき))。「未(いま)だ君子を見ず」(草蟲(そうちゅう))。(3)徳の高い人。「斐(ひ)たる君子有り」(淇奥(きいく))。(1)(3)の用法では「小人」に対する。孔子も(1)(3)両義に用いる。「君子の徳は風。小人の徳は草。草これに風を上(くわ)うれば、必ず偃(ふ)す」(『論語』顔淵(がんえん)篇(へん))の場合、君子は為政者。「君子は義に喩(さと)り、小人は利に喩る」(里仁(りじん)篇)というときは有徳者の意味。そして「君子は器ならず」(為政篇)というとおり、幅広い教養人。職人でない。
[本田 濟]
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出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報
…聖天子の尭に招かれても,これをけがらわしいとした許由(きよゆう)や,周の武王の治世でもその粟をくらわなかった伯夷(はくい)・叔斉(しゆくせい)などが,その典型とされる。生活態度は道家に近いが,儒家でも《論語》には〈邦に道なければ〉隠遁する人を〈君子〉として評価しており,民の声を示す暗黙の批判者として逸民を容認し尊重することが,為政者の務めとされる。3世紀に《高士伝》が出はじめ,《後漢書》の〈逸民列伝〉以後ほとんどの正史に隠逸,高逸,逸士などの列伝があるのは,そのころに逸民に対する評価が確立し,以後の中国社会に容認されたことを示す。…
…タケの地下茎の広がりを止めるには,ビニル板の類をすきまなく土中深さ約80cmまで埋めこめばよい。【上田 弘一郎】
【タケと人間】
[中国]
竹は節目正しく,まっすぐに生長し,冬にも青々としていることから,俗気のない君子の植物とされ,此君(しくん),君子,抱節君,処士などの異名をもつ。唐画では,梅,蘭,菊とともに〈四君子〉と称され,気品ある植物としてしばしば画材とされてきた。…
※「君子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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