助六物(読み)すけろくもの

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「助六物」の意味・わかりやすい解説

助六物
すけろくもの

歌舞伎,人形浄瑠璃,三味線音楽の曲の一系統。遊侠者の助六遊女の揚巻との心中事件ないしは情事を主題とする下記のような曲の総称。通称『助六』。宝永6 (1709) 年大坂千日寺での情死事件がモデルともいわれるが,未詳。初め上方で心中物として脚色されたが,江戸に移入されてからは他の狂言の一場面という趣向になり,特に曾我狂言と結びついた。 (1) 一中節『蝉のぬけがら』 宝永3 (06) 年,大坂の片岡仁左衛門座初演。 (2) 歌舞伎『助六心中紙子姿』同年,京都の早雲座初演。 (3) 義太夫節『千日寺心中』 同6年,竹本座初演。 (4) 半太夫節 正徳3 (13) 年,江戸の山村座初演の歌舞伎『花館愛護桜』の第2番目。2世市川団十郎が上方から移入。人物はこれより吉原の三浦屋の遊女揚巻となじみ客の花川戸の助六となる。のち天保年間に歌舞伎十八番の一つとして制定された。 (5) 歌舞伎『式例和曾我』 正徳6 (16) 年,江戸中村座初演。 (6) 河東節 本名題『富士筑波二重霞』。享保 18 (33) 年,江戸市村座上演の『英分身曾我』の第2番目。 (7) 義太夫節『万屋助六二代かみこ』 享保 20 (35) 年,豊竹座上演。 (8) 河東節 本名題『杜若縁丹前』。元文4 (39) 年,市村座上演の『初もとゆい通曾我』の第3番目。 (9) 河東節『助六郭家桜』 寛延2 (49) 年,中村座上演の『男文字曾我物語』の第2番目。 (10) 河東節『富士筑波卯月里』 宝暦6 (56) 年,中村座上演の『長生殿常桜』の第2番目。 (11) 河東節『助六由縁江戸桜 (すけろくゆかりのえどざくら) 』 同 11年,市村座初演。『江戸紫根元曾我』の第2番目。文化年間以後は,河東節を用いるときはこの曲に定まる。普通,河東節「助六」といえばこの曲。助六物のうち最も有名。 (12) 河東節『三燕桜朧夜』 明和1 (64) 年,江戸の森田座初演。『誰袖粧曾我』の第2番目。 (13) 長唄『女伊達姿花』 同年,市村座初演。女助六。 (14) 義太夫節『紙子仕立両面鑑』 同5年,大坂阿弥陀池東の芝居上演。 (15) 河東節『助六郭花道』 安永5 (76) 年,市村座初演。『冠言葉曾我由縁』の第2番目。 (16) 河東節『助六郭夜桜』 同8年,中村座初演。『御摂もとゆい曾我』の第2番目中幕。 (17) 河東節『助六花街二葉草』 寛政3 (91) 年,市村座初演。 (18) 長唄『女助六』 五変化舞踊の一つ。本名題『春昔由縁英』。天明5 (85) 年,江戸の桐座初演。 (19) 長唄『助六』 八変化舞踊の一つ。本名題『花翫暦色所八景』。天保 10 (1839) 年,中村座初演。 (20) 常磐津節『助六』 本名題『大都会成扇絵合』なる舞踊の3部組曲の一つ。明治2 (69) 年,東京中村座初演,(21) 常磐津節『家桜郭掛額』 同3年,東京守田座初演。尾上菊五郎が演じるため作曲。 (22) うた沢『花雲命捨鐘』 同5年,東京中村座上演の世話狂言の愁嘆場に使用。 (23) 清元節『助六曲輪菊』  1915年,東京市村座初演。6世尾上菊五郎が助六を演じた曲。 (24) 山田流箏曲 (11) の河東節を箏に移したもの。

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