化学熱傷(読み)カガクネッショウ(その他表記)Chemical burn

デジタル大辞泉 「化学熱傷」の意味・読み・例文・類語

かがく‐ねっしょう〔クワガクネツシヤウ〕【化学熱傷】

化学物質による皮膚粘膜損傷。皮膚に直接触れるほか呼吸による喉や気道の粘膜損傷も含む。酸やアルカリなどの化学薬品によるものが多い。化学損傷薬傷。化学火傷やけどケミカルバーン

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六訂版 家庭医学大全科 「化学熱傷」の解説

化学熱傷
かがくねっしょう
Chemical burn
(皮膚の病気)

どんな病気か

 酸、アルカリなどの刺激性の化学物質が皮膚に付着したために起こる皮膚障害で、他の熱傷よりは深いものになりやすい傾向があります。

 一般的には、アルカリによるもののほうが酸によるものよりも深い部分にまで症状が出やすいようです。

症状の現れ方

 化学物質によって受傷部の色調は異なり、硫酸(りゅうさん)褐色塩酸硝酸(しょうさん)黄色を示します。強酸では深いものとなりやすく、広範囲に強酸による受傷がある場合は、腎臓肝臓の機能障害が現れる場合があります。アルカリによるものでは、蛋白融解(ゆうかい)作用によって受傷部は白色から褐色となって軟らかくなります。

 灯油がついた衣服を着ていて起こる灯油皮膚炎では、通常は発赤(ほっせき)小水疱(しょうすいほう)、びらんなどの浅い熱傷の症状になります。

検査・治療の方法

 熱傷に準じた検査を行います。

 基本的には熱傷の治療と同じですが、化学熱傷では深いものとなりやすく、壊死(えし)組織の除去や皮膚移植が必要となりやすい傾向があります。

応急処置はどうする

 化学物質が手につかないように気をつけながら、ただちに布類でやさしくふき取ってから、大量の水で洗い流すことが大切です。ただし、生石灰の場合は、水と反応して熱を出すので注意が必要です。

 中和を考えて、薬剤をさがすような時間をかける必要はありません。また、中和剤によってかえって受傷する場合もあります。

堀川 達弥

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「化学熱傷」の解説

かがくねっしょう【化学熱傷 Chemical Burn】

[どんな病気か]
 やけどの原因は火や熱湯ばかりではありません。特殊な原料や薬品を扱う工場などでは化学熱傷(化学薬品によるやけど)がみられます。これらのやけどは、職業性のもので、酸とアルカリによるものが多くみられます。
■酸による化学熱傷
 硫酸(りゅうさん)、硝酸(しょうさん)、塩酸、フッ化水素酸、フェノールがおもな原因物質です。これらをからだに浴びると、細胞が脱水や、たんぱく凝固をおこします。とくにフッ化水素は激しい反応をおこし、深部組織まで融解してしまい、激痛をともないます。
 治療は、まず速やかに大量の流水で洗い流し、つぎに重曹水(じゅうそうすい)で洗います。その後の治療は熱傷と同様です。
■アルカリによる化学熱傷
 苛性(かせい)ソーダ、苛性カリ、生石灰(せいせっかい)によるものが多くみられます。からだに浴びると脂肪の酸化、細胞からの吸水、たんぱくの溶解をおこします。痛みは酸より強いものです。
 治療は、まず流水で洗い流し、つぎに5%塩化アンモニウム液で洗った後、水洗いします。その後の治療は熱傷と同様です。なお、生石灰の場合は水洗いすると熱を発生しますので、粉末を払い落としてから水洗いします。

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世界大百科事典(旧版)内の化学熱傷の言及

【やけど】より

…高温の気体,液体,固体に触れることによって発生する皮膚障害。酸やアルカリなど化学薬品による皮膚の障害もやけどといわれるが,これは化学熱傷とよばれる。やけどの程度は,深さと広さによって決定される。…

※「化学熱傷」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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