化粧療法(読み)けしょうりょうほう

百科事典マイペディア 「化粧療法」の意味・わかりやすい解説

化粧療法【けしょうりょうほう】

身体障害者および高齢者に対して行われる精神療法の一つ。もともとは老人性認知症痴呆)の女性を対象に行われていたもの。化粧をすることで,いつもきれいでいたい,より美しくなりたいという意識に訴え,情動(喜び,悲しみ,怒り,恐れなど,急速に引き起こされる一時的な感情の動き)を活性化させ,認知症症状を改善させることを意図していた。現在では福祉施設老人ホームなどに幅広く導入され,表情が明るくなった,おむつが取れたなど,患者たちの若返り効果をあげている。また,女性だけでなく,周りの男性患者がしっかりするという効果もあるという。 化粧品メーカーの資生堂が全国の福祉施設で〈お化粧教室〉を開催するなど積極的に実施しているほか,1998年5月には横浜市の特別養護老人ホーム〈さくら苑〉で〈キモノ・ファッションショー〉が開催され,話題となった。 まだ試みの段階で,実際にどの程度の効果があるかは不明といわれるが,鬱(うつ)病統合失調症精神分裂病),アルツハイマー病患者に対して化粧を施している同志社大学(感情心理学)の浜治世教授の報告によれば,ほとんどの人は化粧後に声の周波数が高く,声が明るくなったという。

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知恵蔵 「化粧療法」の解説

化粧療法

化粧を用いた治療法で、一種の健康美容。化粧が心理学的な過程を介して心理・生理的な治療効果をもたらすことを期待して行われる。化粧療法に関する研究は、1980年代から盛んになった。大別すると、(1)スキンケアを中心としたリラクセーション効果の研究、(2)メーキャップを中心とした臨床的応用の研究、(3)フレグランスを中心としたアロマコロジーの研究など。化粧で高齢者がどのように変化するのか、医療機関で調査した結果、9割の人に表情が明るくなるなどの変化が見られ、化粧が「社会人」としての自覚を促したものと考えられる。またやけどやあざなどを自然にカバーする専用ファンデーションが開発されるなど、容貌の問題を克服するセラピーメーキャップ、カムフラージュメーク、メディカルメークなどへの注目度も高い。

(三浦志郎 資生堂ビューティーソリューション開発センター所長 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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