卸売(読み)おろしうり(英語表記)wholesaling

精選版 日本国語大辞典 「卸売」の意味・読み・例文・類語

おろし‐うり【卸売】

〘名〙 生産者または輸入業者から商品を仕入れ、これを小売商人に売り渡すこと。また、その業種や、その人。おろし。
浮世草子日本永代蔵(1688)三「此木屑(くず)より箸を削りて、須田町瀬戸物町青物屋におろし売(ウリ)

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デジタル大辞泉 「卸売」の意味・読み・例文・類語

おろし‐うり【卸売(り)】

[名](スル)生産者や輸入業者から大量の商品を仕入れ、小売商に売り渡すこと。また、その業種や業者。
[類語]仲買小売り

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改訂新版 世界大百科事典 「卸売」の意味・わかりやすい解説

卸売 (おろしうり)
wholesaling

卸売業者や小売業者など商業者,あるいは各種の業務用購入者に対する商品ないしはサービスの販売をいう。卸売という概念は,もともと小売に対応するものであり,小売が個人的に消費する最終消費者に対する販売であるのに対して,卸売は,最終消費者に対する販売以外のすべての販売を包括する概念であるといえる。すなわち,卸売と小売の概念区分は,その取引規模や取引件数,取引対象商品などによって規定されるものではなく,もっぱら販売先の性格によって規定されるのが通例となっている。したがって,文具商が,ボールペンを個人的に使用する最終消費者に販売する場合は“小売”であるが,事務用として使用する商店や製造業者に販売する場合は“卸売”であり,同じ業者が同じ商品を販売する場合でも,小売になったり卸売になったりすることがありうるわけである。卸売の主要な機能としては,需給調整機能,物的流通機能,金融機能,および危険負担機能などがあげられる。なかでも需給調整機能は,適切な商品種類の取りそろえや品ぞろえ,商品企画を内容とするマーチャンダイジング機能のほか,販売促進機能や情報機能などが含まれ,おおむね中心的な機能となっている。

 卸売を主たる業務とする商業者を卸売業wholesaling middlemenという。卸売業は,取引に際して商品ないしはサービスに対する所有権の取得・譲渡の当事者となる自己卸売業ないしは差益卸売業merchant wholesalersと,所有権の取得・譲渡の当事者とはならず,売買当事者の代理人として取引遂行の補助・助成的活動のみを行う代理卸売業agent wholesalersに大別される。また取扱商品の範囲によって総合卸売業・業種別総合卸売業・専門卸売業(限定品目卸売業)に,流通経路上の役割や位置によって収集卸売業産地卸売業)・仲継卸売業(集散地卸売業)・分散卸売業(消費地卸売業),ないしは一次卸(大卸)・二次卸(中卸)・三次卸(小卸)に,発揮する機能の範囲によって全機能卸売業full-function wholesalersと限定機能卸売業limited function wholesalersに,そして,それぞれの商圏の広がりによって全国卸売業・地方卸売業に分けられる。これらの中で,代理卸売業と限定機能卸売業については,日本ではこれまでごく限られた事例しかみられなかったが,アメリカなどの事例も含めれば,代理卸売業には,ブローカーコミッション・ハウス(ほぼ商法上の問屋に相当するアメリカの卸売業),駐在買付代理業resident buyers,せり売買会社auction companiesや日本の商法上の問屋などがあり,限定機能卸売業には,ラック・ジョバーrack jobbers(小売店店頭の一つのコーナーのいっさいの管理をゆだねられ,専門性を発揮する卸売業),現金払い持帰り制卸売業ないしは現金問屋cash-and-carry wholesalers,車積巡回卸売業truck wholesalers(wagon jobbers),直送卸売業drop shipment wholesalers,通信販売卸売業mail-order wholesalersなどがある。

 ところで現在では,問屋といえば一般の卸売業(とくに自己卸売業)という概念とほぼ同義に解する傾向がある。だが歴史的には,問屋は,受託売買を中心とする取引を行い,代理卸売業の一形態として展開していた経緯があり,現在でも日本の商法(551条)上では,〈自己の名をもって他人のために物品の販売又は買入をなすを業とするもの〉として,明確な位置づけがなされている。すなわち問屋は,買付けないしは販売を委託する本人との関係において,その取引から生ずる利益や損失をいっさい受けず,ひたすら手数料を得るだけである。しかし,問屋とその売買の相手となる売手ないしは買手との関係においては,問屋は,自己の名をもって契約を結んでいるから,売手に対しては代金支払の義務があるとともに,買手からの代金回収の義務(したがって貸倒れリスク)を負っているといえる。

 なお,卸売を担当する機関は,いうまでもなく,独立した専業者たる卸売商業者だけではない。製造業者の本社営業部・支店・出張所などは,すべて製造業者自身が卸機能を発揮するために設けた卸売機関である。また,連鎖小売業(チェーン・ストアchain store)や多店舗化した消費生活協同組合の仕入本部も,同様に卸売機関である。
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百科事典マイペディア 「卸売」の意味・わかりやすい解説

卸売【おろしうり】

生産者から大量荷口で商品を買い付け,これを小売商や産業需要者に売り付ける業者間販売のこと。問屋代理商仲立人の業務を兼ねることもある。一般に取扱品目別に専門化しており,商品流通段階での数量や品質の調節を容易にし,社会的配給費の節減に寄与する。しかし,近年は消費者の買物傾向が何でも揃う広域大型店へ移行しているため,業種別小売店も減少しつつある。そのため,卸売商も大型店の注文に対応できる体制に変わりつつあり,その数も減少傾向にある。また,卸売商を通さない流通方式も増加している。

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世界大百科事典(旧版)内の卸売の言及

【仲買】より

…ブローカーは仲立人(なかだちにん),仲介人(ちゆうかいにん)とも呼ばれる。 法定商品市場の商品取引所では商品取引員の旧称である商品仲買人の略称,また卸売市場では仲卸業者の通称。商品取引所の商品取引員は商品取引所法で定める会員のうち〈売買の媒介,取次ぎもしくは代理(商品市場での売買取引の取次ぎを含む)〉者という規定に当てはまる仲買業者である。…

※「卸売」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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