他人間の商行為の媒介をなすことを業とする者(商法543条)。媒介ないし仲立ちとは,他人間に契約が成立するように,契約当事者,内容,条件や相場につき情報を提供して周旋活動をすることである。古くから世界各地で通訳によるこの種の周旋活動は存在した。中世の仲立人は都市・ギルドの官吏的性格をもち,両当事者に中立的に媒介し,独占を認められ,取引の適法性を確保する役割を果たし,仲立ちが強制されることもあった。19世紀には官吏性は漸次緩和され,自由な仲立人となった。しかし,仲立人の報酬は両当事者が平分(折半)して負担するとの規定(550条2項)にこの官吏性を残している(本来なら媒介の委託をなした者に対してのみ報酬を請求できるはずだからである)。商法は媒介の引受けを業とする者を商人とするが(502条11号,4条1項),商行為の媒介をする商人のみを仲立人とする(543条)。商行為以外の行為を媒介する商人を民事仲立人といい,結婚の周旋業者などがその例である。(商事)仲立人は商品・有価証券の売買,金融取引(とくにコール・マーケット),用船契約,海上保険,旅行・宿泊契約での媒介に多い。
民事仲立人を含めて媒介業者を一般にブローカーと呼んでいる。仲立人は広く一般顧客(商人が多い)の委託に応じて媒介という事実行為である周旋をなす者で,締約代理商(46条。代理商)や問屋(といや)(551条)のように委託に応じて第三者と代理,取次ぎの法律行為をなすものではなく,媒介代理商(46条)のように一定の商人に常嘱されて媒介するものでもない。仲立人は媒介という事実行為を引き受けるから,委託者との間は準委任契約であり,委任の規定に服する(民法656条)。ほかに商法は次のような特則をおく。すなわち,仲立人は証拠を保全して当事者間の紛争を防止するため,見本の保管,結約書の作成交付,仲立人日記帳の作成およびその謄本の交付の義務がある(商法545~547条)。特約・慣習がなければ,当事者のために契約履行の給付を受領できぬこと(544条)や,報酬の両当事者折半負担(550条2項)に現れているように,仲立人は両当事者に中立・公平に媒介をしなければならない。また,当事者の命ずるときは仲立人は当事者を秘匿する義務を負い(548条),その場合は,秘匿した当事者の相手方に対し,みずから履行する責任がある(549条)。
執筆者:大塚 龍児
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…問屋どうしの取引の際,中間に立って売買契約を取り次ぎ,自分の意思での売り買いはせず在庫ももたないブローカーをも含める。ブローカーは仲立人(なかだちにん),仲介人(ちゆうかいにん)とも呼ばれる。 法定商品市場の商品取引所では商品取引員の旧称である商品仲買人の略称,また卸売市場では仲卸業者の通称。…
…仲立人とも呼ばれ,独立の第三者としての立場にあって,他人間の商行為の仲介を営業とするものをいう。代理商のように一定商人に従属するものでなく,自由に市場をかけ回って,売手のために買手を探し,買手のために売手を求めて,取引の仲介行動をするところに特色がある。…
※「仲立人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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