一定の商人のために平常その営業の部類に属する取引の代理または媒介を業とする独立の商人。取引の代理をする締約代理商と媒介をする媒介代理商とがあり、前者には代理権があるが、後者にはない。商人が広範な地域で営業活動を行うに際し、地方の事情に通じている者を代理商として利用することが多い。代理商は商人の営業活動を継続的に補助する点で商業使用人と類似するが、代理商は自ら独立の商人であって、営業主と雇用関係にたつ商業使用人とは異なる。商人と代理商との関係は代理商契約により定まり、締約代理商の場合は取引の代理という法律行為の委託を引き受けるもので、その性質は委任契約であるが、媒介代理商は媒介という事務の委託を引き受けるもので、準委任契約である。しかし、商法は、代理商の自働的通知義務、競業避止義務、商事留置権などにつき、民法の委任契約における受任者としての権利・義務とは異なる特別の規定を置いている。
[戸田修三]
商法上の代理商の別称として代理店の語が用いられるが、これには、商品販売を委託された売方代理店と、商品購入を委託された買方代理店とがある。前者のうち一国全体のような広大な市場の販売を代理するものをとくに総代理店といい、外国メーカーが輸出販売などに多く利用する。代理店はまた、商品売買のみでなく、運送代理店、保険代理店、広告代理店、旅行代理店など、物品売買業以外の商業すなわちサービス業についても多く利用される。
[森本三男]
一定の商人のために平常その営業の部類に属する取引の代理または媒介をする独立の商人(商法46条)。俗に代理店と呼ばれるものには,法律上の代理商もあれば,そうでないものもある。たとえば,旅行代理店Aが運送業者Bから運送契約を締結するための代理権を与えられているとき,AがBの名で客Cと運送契約を結ぶと,その契約はただちにBC間に成立する。このように代理権を与えられた代理商を締約代理商という。Aが運送業者Dから代理権を与えられておらず,客EをDに引き合わせるだけで,運送契約を締結するか否かはEとDの交渉で決めることになっていれば,この場合のAは媒介代理商と呼ばれる。代理商Aは,商人たる運送業者BまたはDの使用人ではなく,A自身が独立の商人である点で商業使用人と異なる。旅行代理店Aが客Fから委託を受け,Fの計算において,しかしA自身の名でB,Dその他の運送業者と運送契約を締結することもあり,Aがしている行為は取次ぎと呼ばれ,この場合のAは代理商ではない。また,旅行代理店Aが客を不特定の運送業者に引き合わせるのであれば,Aは仲立ちをしていることになり,同じ媒介であっても,一定の運送業者にだけ客を引き合わせる媒介代理商とは異なる。代理商が代理または媒介をする本人たる商人は複数であってもよいが,同じ営業の部類に属する取引の場合は,それぞれの本人から許諾を得る必要がある(48条)。
執筆者:龍田 節
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…いずれかの国の法律により適法に設けられた商号は,他国においても保護されるのが原則である(工業所有権の保護に関するパリ条約8条参照)。(c)商業使用人および代理商 商業使用人および代理商と本人との関係は,代理権授与行為の準拠法によるが,商業使用人および代理商が代理行為を行った地の法によるのが日本の多数説である。なお,〈代理の準拠法に関するハーグ条約〉(1978年,日本は未批准)は,本人と第三者との関係については,代理人の営業所所在地国法によるのを原則としている。…
…販売ないしは購買を行おうとする本人principalsのために,販売ないしは購買の代理または媒介を行う業者を,一般に代理商agent middlemenというが,販売代理商ないしは販売代理店は,そのような代理商の一形態であり,主として販売の代理や媒介を行うものをいう。これに対して,主として購買の代理や媒介を行うものを,買付代理商ないしは買付代理店という。…
※「代理商」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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