古京遺文(読み)こきょういぶん

改訂新版 世界大百科事典 「古京遺文」の意味・わかりやすい解説

古京遺文 (こきょういぶん)

1818年(文政1)7月,狩谷棭斎が著した古代金石文の研究書。棭斎は,江戸時代を代表する考証学者であり,《箋注和名類聚鈔》《日本霊異記攷証》等の著作がある。《古京遺文》には,〈宇治橋断碑〉〈船首王後墓誌〉〈薬師寺東塔檫銘〉等,30点が取り上げられている。それぞれについて釈文を示し,発見経緯を述べ,銘文の厳密な考証を行っていて,現在においても,金石文研究の基本書といって過言ではない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「古京遺文」の意味・わかりやすい解説

古京遺文
こきょういぶん

狩谷棭斎(かりやえきさい)の書。1818年(文政1)完成。推古(すいこ)天皇より平安前期に至る金石文30編(うち付録3編)を記録し、訳注を付したもの。その考証は詳細正確、日本古代金石文研究の基礎的文献として、今日なお学問的価値を失わない。棭斎は和漢の書を広く学んだが、とくに中国(清(しん)朝)における実証主義的研究方法に基づいて日本の本文考証や注釈を行ったものが多く、その著書は『日本古典全集』中の『狩谷棭斎全集』に収められている。

和田三三生]

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世界大百科事典(旧版)内の古京遺文の言及

【金石学】より

…こうした背景のもとに江戸時代後期にいたって,日本の金石学は国学や清朝の考証学の影響下で本格的となった。 国学者狩谷掖斎(かりやえきさい)(1775‐1835)の《古京遺文》は,実地踏査に基づく精緻な考証によって,金石文研究史上の金字塔とされている。明治以降,西洋的な歴史学の概念から,国史学の補助学としての金石学が注意されるようになったが,実際には国史学,考古学,美術史学の境界領域にあるため,民間の研究者を含めた各方面の研究者によって,個別的に研究が進められてきた。…

※「古京遺文」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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