合成生物学(読み)ゴウセイセイブツガク(その他表記)synthetic biology

デジタル大辞泉 「合成生物学」の意味・読み・例文・類語

ごうせいせいぶつ‐がく〔ガフセイセイブツ‐〕【合成生物学】

生命現象を工学的な手法理解し、新たな生命現象を人工的に作りだす学問分野。ある有用物質を産する機能をもつ遺伝子を人工的に設計し、実在する生物に導入したり、生物の特性や機能を担う部分抽出・再構成し、進化などの生命現象の理解に役立てたりすることを指す。構成的生物学シンセティックバイオロジー

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共同通信ニュース用語解説 「合成生物学」の解説

合成生物学

明確な定義はないが、生物多様性条約交渉では、人工合成した遺伝子などを用い、新しい性質を持った生物や生命機能をつくり出すことを目指す研究分野を指す場合が多い。従来の遺伝子組み換えは既存の生物の遺伝子の一部を別の生物に組み込む技術だったが、自然界に存在しない遺伝子を機械で製造して組み込めるようになったことで、従来の枠を超える研究が可能になり、新しいバイオテクノロジーの呼称として使われ始めた。有用な薬の開発や食料生産の効率化などへの応用が期待される一方生態系破壊や殺傷力の強い生物兵器の開発につながると警戒する声もある。(共同)

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知恵蔵 「合成生物学」の解説

合成生物学

構成的生物学ともいう。生物や細胞に含まれる分子やシステムに類似はしているが、自然界には存在していない分子やシステムを人工的に作りだし、これらの利用や応用を研究する分野。例えば、現在のウイルスや生物がもつ核酸とたんぱく質は、それぞれ特定の種類の塩基、アミノ酸と呼ばれる構成単位からできているが、別の種類の構成単位からなる疑似核酸や疑似たんぱく質を人工的に作りだし、これらの疑似分子と、従来の核酸、たんぱく質とを比較する。これによって、核酸やたんぱく質の働きや作用などを改良できる可能性がある。また、各種の遺伝子やたんぱく質などの生命体構成物質を人為的に組み合わせて、自然界には存在しない疑似ウイルスや疑似微生物を人工的に、設計図通りに作りだすことも考えられる。遺伝病に対する、遺伝子組み換え技術による治療用ウイルスの開発・作製などは、合成生物学の初歩的な成功例である。従来の遺伝子工学や遺伝子組み換え技術などの発展した形が、合成生物学である。

(川口啓明 科学ジャーナリスト / 菊地昌子 科学ジャーナリスト / 2008年)

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