日本大百科全書(ニッポニカ) 「ピリニャーク」の意味・わかりやすい解説
ピリニャーク
ぴりにゃーく
Борис Андреевич Пильняк/Boris Andreevich Pil'nyak
(1894―1941)
ロシア・ソ連の小説家。本名ボガウ Вогау/Vogau。ドイツ系の獣医の家に生まれる。1920年モスクワ商科大学卒業。短編小説『春に』(1909)、『一生涯』(1915)などの初期作品には自伝的要素が濃い。革命時にコロムナで観察したロシア地方生活が象徴主義的、自然主義的文体の下地をつくった。ベールイの作風を継ぎ、18~19年の国内戦を題材にした長編小説『裸の年』(1921)で一躍文名をあげたが、革命を原始的な生命力にあふれた農民の、衰弱した都市文化に対する勝利ととらえる思想は物議を醸した。『消されない月の話』(1926)はスターリンをモデルにしたことで猛烈な攻撃を受けて即日発禁となり、ベルリンで刊行された『マホガニー』(1929)も攻撃を受けて反ソ作家として文壇から追放され、37年逮捕され獄死した。ほかに『機械と狼(おおかみ)』(1925)、『イワン・モスクワ』(1927)、『ボルガはカスピ海に注ぐ』(1930)などがある。「雪どけ」後、名誉を回復された。
[工藤正広]
『米川正夫訳『消されない月の話』(『世界短篇文学全集 第12巻』1963・集英社)』▽『川端香男里・工藤正広訳『機械と狼』(『20世紀のロシア小説 第八巻』1973・白水社)』