唇の振動で音をつくる管楽器の総称。俗にいうらっぱの類。西洋の主流的な楽器でこれに属するものが,各種とも金属製であることから来た呼び方。しかし金属製管楽器すべてをいうのではない。発音方式が異なるフルート,サクソフォーンなどは,金属製であっても木管楽器とみなされる。口を閉じて管の入口に当て,唇の間に呼気流を通す。唇がふるえて気流が断続し,その作用を受けて管内の空気が楽音を形成する。唇の機能がオーボエなどのリード(振動体)と似ているので,リップ・リードともいう。管の形状から円筒管系と円錐管系に大別され,前者をトランペット,後者をホルンで代表させることもあるが,どちらも管端の開口が大きく広がってアサガオ形を呈する例が多い。祖型の誕生は有史以前とされ,円筒管は樹皮,樹幹,竹筒,骨など,円錐管は角,巻貝などの利用に始まると考えられる。管の長さは音の波長と関係し,長いとピッチが低く,短いと高い。管長の2倍にあたる波長の音を基音またはペダル音と呼ぶが,一部の低音楽器を除き,実用にはならない。この音の倍音系列(自然倍音列)に属する諸音を,唇の緊張度や呼気圧の調節によって吹き分け,演奏するのである。図1のように,基音から約3オクターブ上までは倍音の数が限られ,相互の音程が広いが,その上は間隔がつまってくる。この1系列の倍音だけでも,単一の分散和音を骨子とする単純な旋律は吹けるが,音階の音がそろっていないし,倍音の中には使いにくい音(調子外れ)も混じっている。音階全体を自由に使うには,管長を随時変化させる工夫が必要で,そのためのしかけが弁(バルブ)と迂回管であり,トロンボーンのスライドである。操作すると管が延長され,全体のピッチが下がって,別の倍音列が設定されるのであり,3弁以上あれば基音の増4度上から全音域の上限に至るまでの半音が吹き分けられる。近代化された金管楽器の大多数がピストン式またはロータリー式の弁を備える。音色に関して,長さの割に太目の管は音も太くて柔らかく,細目は明るく鋭い。唇を働きやすくするため入口に装着する歌口(マウスピース。図2)も音色への影響が大きい。内面の形によってカップ状(盃形)と漏斗(ろうと)状の両タイプに分かれ,前者は音色が鋭く,後者は太い。
弁の発明は19世紀に入ってである。それ以前に音階を自由につくれたものとして,まず木管楽器とのあいのこともいえるコルネットがあり,次にスライド式トロンボーンがある。トランペットは一部にスライド式も現れたが,そうしたしかけのない楽器が主流を占め,奏者は第4オクターブないしそれ以上の高音を使いこなして,コロラトゥーラ・ソプラノなみの名技を披露した。合奏では楽器の基調と曲の調性が合致する必要があるため,管の途中の差替え(管長の調節)が行われた。ホルンでは,アサガオ状開口に手を入れて,音程をつくる技法が発達した。弁の発明は金管楽器に変革をもたらした。今日のトランペットは昔と比べて管長は半分,基音はオクターブ高くつくり,昔と同じ音域で演奏する。実音は昔と同じでも,倍音次数からいえば昔よりオクターブ低いことになるが,弁のおかげで音の不足に困ることはなく,一方,音の吹分けが安定し,複雑な半音階的変化も危なげがない。チューバなども弁なしには考えられない楽器である。ダブル・ホルン,テノール・バス・トロンボーンなども弁の機構を応用している。
執筆者:中山 冨士雄+関根 裕
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唇の振動を用いて発音される管楽器の総称。ほとんど真鍮(しんちゅう)でつくられるが、金属製でないものもある。ホルン系の楽器とトランペット系の楽器とに大別できるが、起源は同一であり、絶対的な分類ではない。ホルン系の楽器は、角笛(つのぶえ)の円錐(えんすい)管を基本として発達してきたもので、倍音が少なく柔らかい音が出る。ただし今日では、操作上複雑な構造をもたせる必要から、円筒管がかなり使われている。トランペット系の楽器は、円筒管の占める割合が大きく、倍音の多い明るい音が出る。両系とも、管の太さ、ベルやマウスピースの形状も音色に影響している。金管楽器で倍音列に属する音以外の音高を得るためには、現在では、バルブ装置で迂回(うかい)管に空気を通すことによって管長を変えるものが多いが、トロンボーンはスライド式に管長を変えられるものを用いるのが通例である。
[前川陽郁]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…(3)はいわゆるらっぱ類で,唇がリードの働きをするので,リップ・リードなどともいう。西洋では(1)と(2)の方式の楽器を指して木管楽器,(3)を金管楽器と呼ぶ習慣があり,実際の材質とときに不一致のまま行われている。管楽器のピッチを決定するのは管の長さと内部における空気の振動様式(開管または閉管)である。…
※「金管楽器」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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