品・科・階(読み)しな

精選版 日本国語大辞典 「品・科・階」の意味・読み・例文・類語

しな【品・科・階】

[1] 〘名〙
① 階段。きざはし
※新訳華厳経音義私記(794)「階陛 倭云之那(シナ)
源氏(1001‐14頃)若菜上「御階の中のしなの程に居給ひぬ」
② 種類。また、等級やその違い。差異
書紀(720)欽明二年四月(寛文版訓)「因りて物贈ること各(おのおの)(シナ)有り」
③ 人の位(くらい)。身分。地位。
※書紀(720)斉明二年是歳(北野本訓)「位の階級(シナ)を闕(もら)せり
※源氏(1001‐14頃)帚木「人のしな高く生まれぬれば」
④ 人や物の品格、または品質。
(イ) (人間に関して) 人品。人柄。ひん。
※源氏(1001‐14頃)若菜下「見知り顔にほのめかす、いとしなおくれたるわざになむ」
(ロ) (物事の状態、性質に関して) 風情風格。品格。
無名抄(1211頃)「この半臂の句は、必ずしなと成りて姿を飾るものなり」
⑤ 物事の事情や理由。
(イ) そうなった事情や立場。
※浮世草子・傾城色三味線(1701)京「あたまから御かへりの後は、としてかくしてと、其品(シナ)をかかるべし」
(ロ) 理由。わけ。
浄瑠璃・吉野都女楠(1710頃か)三「此度の合戦に大将の御目に及ぶ程の高名せよかし、それを品に勘当許し」
⑥ 方法。しかた。やりかた。
※中華若木詩抄(1520頃)上「罪科に依て、成敗のしなあり」
⑦ 相応の格式をもった物。また、単に品物。もの。
※虎明本狂言・吃(室町末‐近世初)「かれら、これらをとりあつめ、十二のしなでぬふたる、かたかた物ただ一まい」
⑧ ちょっとしたしぐさふるまい物腰。態度。特に、あだっぽいしぐさ、様子。媚(こび)をふくんだしぐさ、様子。
※雑俳・神酒の口(1775)「そろそろと・目から品つくむすめの子」
⑨ 感情のこもっていること。情味。→しなを有らす
[2] 「しながわ(品川)」の略。
※雑俳・柳多留‐一〇(1775)「品の客酒たけなわにおよんだり」
[語誌]((一)について) (1)「新撰字鏡」で「陛」「層」「」につけられた和訓に「シナ」とあることや、地名の「しなの」「さらしな」「やましな」などから、本来は階段状の地形を表わす語であったことが考えられる。
(2)これがその後、同類の事物間に存する階層や差異、人の身分、さらに転じて、人や物の品格をも意味するようになる。

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