品部・雑戸(読み)しなべざっこ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「品部・雑戸」の意味・わかりやすい解説

品部・雑戸
しなべざっこ

律令(りつりょう)制のもとで、諸官司に属し軍事や生産を担当した技術民。品部は「ともべ」「しなじなのとも」ともよむ。京畿(けいき)の内外に配置され、官司に上番し、世襲的な職業集団として特殊な系列を構成した。養老(ようろう)令によると、品部は36類・2387戸で、これに借品部1類・50戸、いちおう品部と認められるもの3類・390戸を加えると、あわせて2827戸に上り、雑戸はこれに比べて少なく11類・834戸である。品部とは大化前代では各種の部民を包括する概念であるとの説もあるが、やはり部民のうち朝廷に直属する職業的部民を中心とする概念と解したほうがよく、名代(なしろ)・子代(こしろ)、民部(部曲)などとは区分される。律令制はこの品部を継承したのであるが、雑戸がなぜ別置されたかは明らかでない。一般的にいって、品部の地位が高く、公民賦役一種とみなされ、雑戸は品部より古く、そのために伝統的な卑賤(ひせん)視から抜け切らぬまま、品部制のなかに特殊な地位を与えられたものとみられる。8世紀に雑戸だけの計帳がつくられ、雑戸身分の解放が行われたことはそれを裏づけている。しかし官営工房の中核はむしろ、武具鉄器皮革兵馬などを担当した雑戸にあり、その周辺に常品部(正式の品部身分のもの)、さらに借品部(公民を臨時に編成したもの)を配し、外周に通常の番上工を組織し、そしてもっとも外側に公民の調庸(ちょうよう)生産を置いたのが、古代国家のつくりあげた体系的な分業組織であるとみられる。大化前代の遺制である品部制はやがて廃され、雑戸も解放されるが、その一部は形を変え特殊賤民として残ったとの説もある。

[平野邦雄]

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