啓典の民(読み)けいてんのたみ

百科事典マイペディア 「啓典の民」の意味・わかりやすい解説

啓典の民【けいてんのたみ】

イスラムでいう,ユダヤ教徒,キリスト教徒のこと。イスラムでは,啓典とは真理を顕す神の言葉とされ,モーセ五書旧約聖書最初の5つの書),詩篇福音書の3つを認める。そしてこれらの書にもとづくユダヤ教徒,キリスト教徒を〈啓典の民〉として,おもに人頭税の支払いを条件に,その信教の自由を保護してきた。
→関連項目ジズヤ

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「啓典の民」の解説

啓典の民(けいてんのたみ)
ahl al-kitāb

アラビア語で,イスラームコーランのように神から啓示された聖典を持つ宗教を奉じる人々。特にムスリムからみたキリスト教徒,ユダヤ教徒をさす。啓典の民はジンミーとしてダール・アルイスラームに居住でき,女性は男性ムスリムと通婚できるなど,他の異教徒とは異なる扱いを受けた。

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旺文社世界史事典 三訂版 「啓典の民」の解説

啓典の民
けいてんのたみ

イスラーム地域におけるユダヤ教徒・キリスト教徒のこと
ムハンマドによって,イスラームと同系預言にもとづく宗教と定義され,ジズヤの貢納によって信仰生活を保障された。イスラーム地域の拡大とともに,ゾロアスター教徒仏教徒にも適用された。

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世界大百科事典(旧版)内の啓典の民の言及

【イスラム】より

…歴史上重要な役割を演じたアラブ,ペルシア人(イラン人),トルコ人,モンゴル人,ベルベル以外に,クルド,アルメニア人,ヌビア,スラブ人,グルジア人,ダイラムなどの,いわゆる〈少数民族〉も数多く存在した。宗教別にみれば,イスラム教徒のほかに,人頭税(ジズヤ)の支払を条件に〈啓典の民〉として信仰の自由を保障されたキリスト教徒やユダヤ教徒,あるいはゾロアスター教徒などがおり,しかもイスラム教徒自体がスンナ派,シーア派,アラウィー派ドルーズ派などの諸分派に分かれていた。これらの民族や宗派は,たとえばペルシア人は書記・文人として,トルコ人は軍人として,ユダヤ教徒は商人・金融業者としてとくに目だった働きをしたように,それぞれ固有な技術や才能を生かしてイスラム社会に独自な地位を占める場合が多かった。…

【人頭税】より

…行政用語としてはジズヤのほかにジャーリヤjāliya(原義は流亡者),その複数形ジャワーリーjawālīが,主としてエジプトで後世まで用いられた。ジズヤはコーラン9章29節に啓典の民(ユダヤ教徒とキリスト教徒)から徴収すべきものとされ,預言者ムハンマドはアラビア半島で啓典の民からジズヤを徴収したが,それは1人当り毎年1ディーナール(金貨1枚)の人頭税であった。コーランの前掲個所に,〈彼らがへり下って手からジズヤを支払うまで戦え〉とあるように,それはイスラムの支配に対する啓典の民の服従の象徴で,ジズヤのこのような性格は,のちのイスラム法においても継承された。…

※「啓典の民」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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