改訂新版 世界大百科事典 「噴霧機」の意味・わかりやすい解説
噴霧機 (ふんむき)
sprayer
液体を加圧して圧送し,ノズルから噴霧する装置。主として,農業で病害虫の被害を防ぐため,液剤農薬を噴霧する病虫害防除機として用いられる。日本へは1890年ころ人力噴霧機が輸入され,1925年ころには果樹園用の動力噴霧機が導入されたが,32年には国産化されている。第2次大戦後は食糧増産の要請から防除技術の向上が進み,農薬化学の発展とともに動力噴霧機が急速に普及し,とくに水田での病虫害防除に使われ米の増収に大きく貢献した。噴霧機の主要部は,薬液に圧力を加えるポンプ,薬液を霧状に微粒化して噴出させる噴口,両者をつなぐ送液ホース,薬液タンクなどよりなる。噴口には渦巻ノズルが使われる。人力噴霧機で薬液に圧力を加えるには手押式往復ポンプが使われるが,液体に直接圧力を加える薬液ポンプ式と空気の圧力を利用する空気ポンプ式がある。人力噴霧機は肩掛式や背負式の携帯用で,小面積の薬液散布に利用される。動力噴霧機は往復ポンプがほとんどで,クランク機構により原動機の回転運動をプランジャーまたはピストンの往復運動に変えポンプ作用を行うもので,シリンダーの数により2連式と3連式がある。また圧力の変動を滑らかにするための空気室および自動的に一定の噴霧圧力を保つための圧力調節装置が備えられている。動力噴霧機の常用圧力は20~35kg/cm2。
執筆者:岡本 嗣男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報