翻訳|Lent
キリスト教教会暦の中に起こった最初の典礼季節。日本では,教会によって受難節,大斎,復活前期,レントなどとも呼ばれている。復活祭を迎える準備として,とくに洗礼志願者のためを考慮して選ばれた朗読個所が定着することによって固有な典礼季節となる。その準備は祈りと断食(節食)によって行われたが,キリストの断食(《マタイによる福音書》4:2および並行個所)にちなんで40日間行われるようになり,四旬節と呼ばれるようになった。ニカエア公会議(325)にはすでに一般化されていた制度として言及されている。教父の著作のあるものは,40の数の象徴を旧約時代の故事に見ている。
ローマの最も古い習慣では,四旬節は復活祭の6週間前の主日(日曜日)から始まったが,主日に断食するのはふさわしくないということから,主日は数えないで正確に40日になるように,さらにさかのぼって前週の水曜日から始めるようになった。この日には,回心を表す旧約以来のしるしとして,灰を頭にいただいたので〈灰の水曜日〉と呼ばれるようになった。また四旬節第1主日は,古来,教会が洗礼志願者を受け入れて洗礼の準備を始める洗礼志願式が行われる日である。第2主日には主の変容が記念され,第3主日から第5主日まではとくに洗礼志願者を中心にことばの典礼が行われる。この期間の典礼には,洗礼志願者の自由な決断を促すためにとくに選ばれた朗読個所が用いられている。また,四旬節はキリスト者にとって洗礼の記念を新たにし,回心を深めるとともに,それが個人と神との個人的関係にとどまらず,回心と救いの共同体性,罪と悪の連帯性に目覚め,すすんで人類と社会の罪と悪に共同責任を考える時でもある。四旬節の償い,献金,奉仕などは,このような信仰に基づく実践である。
執筆者:土屋 吉正
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復活祭を準備する期間は早くて2月初め、遅くて3月初めから始まり、復活祭の前日までの日曜日を除く40日間を四旬節と名づけている。復活祭が移動祭日であるため、その期間は毎年変わる。キリストの受難を記念して断食・精進を行う期間で、「灰の水曜日」には死と懺悔(ざんげ)を想起させるため聖灰で額に十字のしるしをつける。この期間には「棕櫚(しゅろ)の日曜日」とか、キリスト受難をしのぶ「嘆きの金曜日」などがある。「40」という数は、キリストの荒野における試練やノアの洪水、モーセの荒野の彷徨(ほうこう)等々、キリスト教にとっては重要な意味をもっている数である。
[植田重雄]
『ヤコブス・デ・ウォラギネ著、前田敬作・今村孝訳『黄金伝説I』(1979・人文書院)』
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…一方,中国の道教は肉食ばかりか穀物を摂ることも退けているが(例えば《神仙伝》巻九,介象),その理由は仏教とは異なり,これらを摂取すれば体内の精が血の気によって傷つき,生命を縮めるとして嫌ったためである。他方,肉食を常とする民族の場合にも,キリスト教の四旬節の例などがある。灰の水曜日から復活祭の前日までの6週間半,日曜を除く40日間を断食と斎戒で過ごすのは,聖グレゴリウスによれば四元素からなる肉体が肉の欲望のために十誡を犯すので,その肉体を40回苦しめなければならないためである。…
※「四旬節」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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