図書を中心とした資料の収集、保存、提供を主たる機能とする図書館の本質とその経営、サービスなどを対象とする図書館学library scienceに、情報学information scienceという分野を加えた学問。1970年代以降、図書館の業務のコンピュータ化、情報処理の進展に伴い、図書館学は図書館情報学へと名称を変えていった。
[藤野幸雄・野口武悟 2021年1月21日]
図書館学の歴史は、19世紀のドイツで始まった。専門雑誌『セラペウム』Serapeum(1840~1870)の刊行、近代図書館学の開拓者ともいえるシュレッティンガーMartin Wilibald Schrettinger(1772―1851)、シュレッティンガーを批判し歴史主義図書館学を主張したエーベルトFriedrich Adolf Ebert(1791―1834)の活躍などにより、分類体系、蔵書構築、図書館員の役割などを理論的に究明する方向が打ち出されていった。図書館学Bibliothekswissenschaft(ドイツ語)という語は、シュレッティンガーの著書『図書館学全教程試論』Versuch eines vollständigen Lehrbuches der Bibliothekswissenschaft(1829)により、初めて用いられた。
一方、1876年に図書館協会を創設したアメリカでは、「十進(じっしん)分類法」を発表したデューイMelvil Dewey(1851―1931)により、1887年コロンビア大学に図書館学校が設置され、図書館員養成が始まった。その後各地の大学に図書館学科が開設され、教員が研究に取り組んだ。1926年にはシカゴ大学に博士課程を置く大学院図書館学研究科が創設され、同大学教授バトラーPierce Butler(1886―1953)により『図書館学序説』An Introduction to Library Science(1933)が刊行された。
[藤野幸雄・野口武悟 2021年1月21日]
日本では、明治期に欧米の図書館経営の理論が紹介され、昭和に入ると青年図書館員連盟による『圕(としょかん)研究』が発刊(1928~1943)された。また、1921年(大正10)帝国図書館で文部省による図書館員教習所が開設されるなど、専門的な図書館員養成も行われるようになった。
しかし、図書館学への本格的な取組みは、第二次世界大戦後、1951年(昭和26)慶応義塾大学文学部内に図書館学科が開設されたのをはじめとし、各大学に図書館系の学科が成立してからである。1979年には国立の図書館情報大学(現、筑波大学情報学群知識情報・図書館学類)が図書館短期大学(1964年設置)を母体として設置され、研究・教育への本格的な取組みが始まった。
1990年代以降、文献情報の処理・管理の技術が進み、デジタル化したデータが蓄積できるようになり、大学・学術図書館における電子図書館の研究が活発となった。古典作品、学位論文などのデータベースは京都大学、筑波大学の図書館などで実現しており、研究面でもそのネットワーク化や画像・音声の高度な処理技術が開発されている。
日本の図書館情報学は日本図書館情報学会(旧、日本図書館学会)、日本図書館研究会、図書館文化史研究会などの学会によって、その研究の発展が支えられている。
[藤野幸雄・野口武悟 2021年1月21日]
『P・バトラー著、藤野幸雄訳『図書館学序説』(1978・日本図書館協会)』▽『上田修一・倉田敬子編著『図書館情報学』第2版(2017・勁草書房)』
出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報
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