固体の比熱(読み)こたいのひねつ(英語表記)specific heat of solid

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「固体の比熱」の意味・わかりやすい解説

固体の比熱
こたいのひねつ
specific heat of solid

固体比熱はそれぞれ次に示す値をとるか,法則に従う。常温以上の温度ではほとんどの固体元素のモル熱容量は一定値 25J/K・mol をもつ (デュロン=プチの法則 ) 。また固体化合物のモル熱容量は構成原子の原子熱の和にほぼ等しい (ノイマン=コップの法則 ) 。炭素,ケイ素,ホウ素など少数の原子はもっと小さい原子熱をもっていて,これらの法則に従わない。これらの法則は,固体原子の格子振動に等分配則を適用すると統計力学によって導かれる。しかし固体を低温にしていくと,固体元素のモル熱容量は次第に小さくなってゼロに近づき,この法則からずれていく。この比熱の温度変化を与えるのがアインシュタインの比熱式,およびもっと精密なデバイの比熱式であって,低温になるに従って格子振動の自由度が量子効果によって次第に凍結されていくことを明らかにした。これは量子論の発展に重要な寄与をした。この格子振動による比熱のほかに,金属では自由電子の比熱がある。十分な低温では格子振動の比熱よりも自由電子の比熱のほうが大きくなり,絶対零度に近い低温での金属の比熱を説明することができる。また磁性体合金では第二種相転移などの転移熱による比熱の異常変化が現れることがある。固体の比熱で実験的に測定されるのは定圧比熱 cp であり,理論では定積比熱 cv を扱うことが多い。絶対温度 T ,密度 d ,体膨張率α,圧縮率 κ のとき,cpcvTα2d で与えられる。低温では cpcv はほとんど等しい。

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