ドイツの化学者、化学史家。プロイセンのハーナウで医師を父として生まれる。ハイデルベルク、マールブルク、ギーセンの各大学で化学を学ぶ。1852年に師のリービヒがギーセン大学からミュンヘン大学に移ったため、1853年その後任教授となった。その後、1863年にハイデルベルク大学に教授職を得るまでギーセンで研鑽(けんさん)を積んだ。コップの研究生活の大半は、物質の化学構造と物理的性質の相互関連性の解明に向けられた。マールブルク大学に提出した学位論文は、酸素の密度に関するものであり、定量的測定という化学研究の基礎における非凡な技量を示した。また後年の比熱と分子量との間に成立する法則性(ノイマン‐コップの法則)の探究は、熟練した技術があって初めて成立したものである。原子量を正確に得る方途のまだ存在しない時代に生きながら、デュロン‐プチの法則が原子量の決定作業に重要な役割を果たすことを示した一人でもある。また類似した組成式をもつ有機化合物が、化学的および物理的類似性を同時に示すことや、高温において蒸気が解離することを指摘するなど、物理化学の草分けとしての業績を多く残している。しかし一般には、化学者としてよりも、『化学の歴史』Geschichte der Chemie(全4巻・1843~1847年刊)という浩瀚(こうかん)な書物の著者である化学史家としてよく知られている。この著作は、現代にも通用する古典的価値をもち、たびたび復刻されている。
[井山弘幸]
『A・アイド著、鎌谷親善他訳『現代化学史1・2』(1972、1973・みすず書房)』
日本プロレタリア文化連盟 Federacio de Proletaj Kultur-Organizoj Japanaj(エスペラント)の略称。満州事変が勃発(ぼっぱつ)し、政治的文化的な反動が急速に強化された時代に抗するために、工場や農村を基礎とする文化運動の再編成が求められ、1931年(昭和6)11月に結成された。ナップ加盟の日本プロレタリア作家同盟、演劇同盟、美術家同盟などの芸術団体のほかに、プロレタリア科学研究所、新興教育研究所などの文化団体が加わり、全国的な文化運動の中央指導部を形成し、中央機関誌『プロレタリア文化』のほか『働く婦人』『大衆の友』などを発行した。政治の優位性を強調し、組織活動と文化活動の統一を目ざしたが、指導部の相次ぐ検挙と機関誌の毎号にわたる発禁など、過酷な弾圧によって、34年、事実上の解体に至った。
[伊豆利彦]
日本プロレタリア文化連盟Federacio de Proletaj Kulturaj Organizoj Japanaj(エスペラント)の略称。1931年10月末にナップ(全日本無産者芸術団体協議会)を母体に文化団体の運動の統一,連絡のための協議会として結成。文化運動への日本共産党の影響が強まり,共産党宣伝煽動部の文化団体責任者蔵原惟人(筆名古川荘一郎)の提唱,指導で9月から準備会を開き結成に至った。結成時の加盟団体は日本プロレタリア作家同盟,日本プロレタリア映画同盟,日本プロレタリア演劇同盟,日本プロレタリア・エスペランティスト同盟,日本プロレタリア音楽家同盟,日本プロレタリア美術家同盟,日本プロレタリア写真家同盟,日本戦闘的無神論者同盟,無産者産児制限同盟,プロレタリア科学研究所,新興教育研究所の11団体で,のちにプロレタリア図書館が加盟した。31年12月よりコップ中央協議会機関誌《プロレタリア文化》(月刊,1934年1月終刊)を発行,同誌は1933年4月に中央機関誌《コップ》(1933年12月終刊)発行によって理論機関誌となった。啓蒙誌《大衆の友》《働く婦人》も発行,加盟団体の新聞,雑誌の発行も盛んであった。コップの活動は〈労働者,農民其他の勤労者の文化的生活的要求を充足〉する目的で発足したが,順次非合法の共産党活動家のプールと化した。1932年3月以降弾圧を受け活動は徐々に困難となり,共産党中央部の解体と同時期の34年4月ころに解体した。
執筆者:渡辺 悦次
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…飲み物に用いるガラス製の食器で,英語glassはガラスと同義。コップという呼名もあるが,これはオランダ語kopに由来し,いまは平底の円筒型のものを指す。ガラス容器は繊細で色彩感に富み,また透明のものは中の溶体も見える特徴があり,多様なデザインと用途がある。…
…結成時の加盟団体は日本プロレタリア作家同盟,日本プロレタリア映画同盟,日本プロレタリア演劇同盟,日本プロレタリア・エスペランティスト同盟,日本プロレタリア音楽家同盟,日本プロレタリア美術家同盟,日本プロレタリア写真家同盟,日本戦闘的無神論者同盟,無産者産児制限同盟,プロレタリア科学研究所,新興教育研究所の11団体で,のちにプロレタリア図書館が加盟した。31年12月よりコップ中央協議会機関誌《プロレタリア文化》(月刊,1934年1月終刊)を発行,同誌は1933年4月に中央機関誌《コップ》(1933年12月終刊)発行によって理論機関誌となった。啓蒙誌《大衆の友》《働く婦人》も発行,加盟団体の新聞,雑誌の発行も盛んであった。…
…おもな作家,批評家は蔵原惟人,中野重治,窪川鶴次郎,壺井繁治,佐多稲子,江口渙,藤森成吉,林房雄,小林多喜二,徳永直,立野信之,橋本英吉らで,黒島伝治,宮本顕治,宮本百合子らものちに加わった。〈ナップ〉が〈コップ〉(日本プロレタリア文化連盟)に改組されたのちも〈コップ〉の中心的団体として機能し,また〈コップ〉の各機関誌と別に,同盟独自の機関誌《プロレタリア文学》(1932‐33)を刊行したが,当時の日本共産党の戦略とも関連して生じていた運動方針上の誤りや未成熟のために,満州事変下の加重した弾圧のなかで34年3月に声明を発して解散した。はじめ〈作同〉と略称していたが,1932年2月国際革命作家同盟(モルプ)に加盟してその日本支部となるとともに〈ナルプ(NALP)〉と略称を定めた。…
※「コップ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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