固体の中では,原子はかってに動きまわっているのではなく,平衡位置のまわりで微小な振動をしている。この振動を格子振動という。固体の温度が高いということは,格子振動のエネルギーが大きく,振動の振幅が大きいことを意味している。したがって,格子振動は固体の比熱に寄与する。温度が高いとき,固体の比熱は物質によらずほぼ6cal・deg⁻1・mol⁻1(デュロン=プティの法則)になるが,これは,格子振動に対してエネルギー等分配の法則を適用して説明される。しかし低温になると,比熱はこれより小さくなり,絶対温度の3乗に比例する(デバイの比熱式)。これは,高い振動数をもつ格子振動が,低温で量子効果のため,いちばん低いエネルギー状態に落ち込んで比熱に寄与しなくなるためである。結晶が,正,負の電荷をもつイオンから構成される場合,正,負のイオンが逆の向きに動く形の振動を光学モードoptical modeと呼ぶ。この振動は,光の電磁場により,赤外光と強く相互作用をするためこの名前がつけられている。光学モードの振動数は,ほぼ1013Hzで,赤外光の吸収,ラマン散乱に寄与する。これに対して,正,負のイオンが同じ向きに,同じ大きさで振動するモードは音響モードacoustic modeと呼ばれる。音波程度の低い振動数の波に関係するモードであることからこの名前がついている。
金属の超伝導状態も,電子どうしが格子振動を媒介にして相互作用をする結果,同じ負電荷からのクーロン斥力に打ち勝って引力を及ぼし合うことから生ずるものであり,格子振動は物質の多くの性質にかかわりをもっている。格子振動を直接調べる手段としては,前述の赤外吸収,ラマン散乱のほか,最近は中性子回折も用いられる。
執筆者:二宮 敏行
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…固体中の原子は基底状態においては格子点を占めているが,励起状態ではその格子点のまわりの運動が考えられる。そのような運動のうちで,もっとも低いエネルギーをもつのは全原子が互いに一定の位相を保って振動する自由度で,これが格子振動であり,格子振動を量子化した素励起をフォノンと呼ぶ。このように,フォノンの原因は各原子の運動であるが,素励起としてのフォノンの運動形態は,原子個々の運動とはたいへん異なっている。…
※「格子振動」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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