国際天然ゴム協定(読み)こくさいてんねんごむきょうてい(その他表記)International Natural Rubber Agreement

日本大百科全書(ニッポニカ) 「国際天然ゴム協定」の意味・わかりやすい解説

国際天然ゴム協定
こくさいてんねんごむきょうてい
International Natural Rubber Agreement

略称INRA。天然ゴムの価格および需給の安定化を図るための国際商品協定。この協定は、1976年の国連貿易開発会議UNCTAD(アンクタッド))第4回総会で採択された一次産品総合計画(IPC)に基づいて締結された第1号の国際商品協定であり、一次産品共通基金との提携が協定文のなかに盛り込まれている。第一次協定(79年協定)は79年10月に採択され、翌80年10月に暫定発効し、第二次協定(87年協定)は88年12月、第三次協定(95年協定)は97年2月に発効した。

 この協定の目的は、天然ゴム価格の過度の変動を回避することにより、取引の安定状態を達成することであり、輸出国の天然ゴムによる輸出収入を安定、増加させるとともに、輸入国の需要を満たすために公正かつ妥当な価格による供給を確保することである。これらの目的を達成するために、55万トンを限度とする緩衝在庫が設定されており、天然ゴムを介入価格、介入義務価格の枠内で市場において売却あるいは購入することにより、市場価格の大幅な変動を調整している。そのほか天然ゴムに関する研究、開発、統計資料収集なども行われる。

 1999年現在の加盟国は20か国(輸出国5、輸入国15)および、ヨーロッパ連合EU)で、日本は輸入国として加盟している。なお、同協定に基づいて国際天然ゴム機関International Natural Rubber Organization(INRO)が設立されており、国際天然ゴム理事会、緩衝在庫運用、統計、運営などの委員会事務局で構成され、本部マレーシアクアラ・ルンプールに置かれている。

横川 新]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「国際天然ゴム協定」の意味・わかりやすい解説

国際天然ゴム協定
こくさいてんねんゴムきょうてい
International Natural Rubber Agreement

緩衝在庫操作を通じて市場価格の変動を調整することにより,天然ゴムの価格安定をはかることをおもな内容とする国際商品協定のこと。 1979年に第1次協定が採択され,日本は世界の天然ゴム生産の 80%以上を占めるマレーシア,インドネシア,タイなどのアセアン諸国との経済的交流の維持および増進に貢献し,自動車業界を中心とする需要に安定的供給をもたらすものとして,同協定の成立に積極的に取組んできた。この協定により 80年に国際天然ゴム機関 (INRO,本部クアラルンプール) が設立されている。 87年に採択され,88年 12月より暫定発効した第2次協定は,緩衝在庫売買の基準となる価格帯の改訂メカニズムを前協定よりも強化したものとなっている。 95年には新協定がまとめられたが発効時期は未定。 98年現在の加盟国は 26ヵ国およびヨーロッパ連合 EU。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の国際天然ゴム協定の言及

【国際商品協定】より

…1948年のITO憲章(国際貿易機構憲章,いわゆるハバナ憲章)第6章の〈政府間の商品協定〉にうたわれた精神を生かして,経済的繁栄に必要な通商と原料の確保について輸出,輸入国が平等な条件で歩み寄ることを目的に生まれた各種の国際協定。国際商品協定は需給の枠が国際的な広がりをもち,天候などの要因に左右され価格変動の激しい一次産品価格を輸出,輸入国の一方に偏らないような手段のなかで安定させるのが目的である。…

※「国際天然ゴム協定」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、和歌山県串本町の民間発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げる。同社は契約から打ち上げまでの期間で世界最短を目指すとし、将来的には...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android