一次産品に関する国際協力を促進するための政府間協定。国際商品協定の始まりは1930年ごろの国家間および民間の取決めに求められるが、この時期の商品協定は輸出国間協定であって、輸出国と輸入国の双方の協定参加が行われるようになったのは、第二次世界大戦後のことである。
その後、国際商品協定は南北問題の台頭と相まって、一次産品問題の解決策の一環として位置づけられるに至った。とくに、1973年のオイル・ショックを契機として大きくクローズアップされることになった一次産品問題において、国連貿易開発会議(UNCTAD(アンクタッド))事務局が一次産品総合計画(IPC)を提唱し、76年のUNCTAD第4回総会では「一次産品総合計画に関する決議」が採択された。この決議は、個別商品協定の緩衝在庫の保有のために必要とされる「一次産品共通基金」に関する交渉、および主要一次産品(18品目)について商品協定を締結するための「個別産品」交渉を行うことを取り決めたものである。このうち「一次産品共通基金」については80年6月に設立協定が採択され、89年6月に発効した。
国際商品協定の価格安定化メカニズムは次の3方式に分類できる。
(1)緩衝在庫方式 国際的な緩衝在庫を設置して、市場価格が一定価格以上になったときには在庫品を市場に放出し、反対に市場価格が一定価格以下になったときには買い支えを行って在庫蓄積を図る(天然ゴム協定、86年ココア協定など)。
(2)輸出割当て方式 輸出国に対して輸出量を割り当て、需要に見合った供給をすることによって価格安定化を図る(83年コーヒー協定、75年ココア協定など)。
(3)多国間契約方式 上限価格と下限価格をあらかじめ設定しておき、輸入国は、市場価格が上限価格を上回ったときには一定数量を上限価格で買う権利をもち、反対に市場価格が下限価格を下回ったときには一定数量を下限価格で買い入れる義務を負う(49年小麦協定など)。
1980年代ごろから、加盟国の利害対立や一次産品に対する国際的需要の減少などから、国際商品協定に価格安定のための経済条項が規定されるケースは大幅に減少し、天然ゴム協定のみとなった。その他はいずれも統計整備、情報交換、研究開発、市場拡大などの非経済条項に限定された内容となっている。
1999年現在、コーヒー、砂糖、ココア、天然ゴム、穀物、ジュート、熱帯木材、およびオリーブ油について国際商品協定が成立している(日本はオリーブ協定のみ非加盟)。錫(すず)については1956年以来協定が結ばれていたが、その管理機構であった国際錫理事会が巨額の債務を抱え90年7月に解散したことにより、協定は失効するに至った。
[入江成雄・横川 新]
『千葉泰雄著『国際商品協定と一次産品問題』(1987・有信堂高文社)』▽『平島成望編『一次産品問題の新展開――情報化と需要変化への対応』(1989・アジア経済研究所)』
1948年のITO憲章(国際貿易機構憲章,いわゆるハバナ憲章)第6章の〈政府間の商品協定〉にうたわれた精神を生かして,経済的繁栄に必要な通商と原料の確保について輸出,輸入国が平等な条件で歩み寄ることを目的に生まれた各種の国際協定。国際商品協定は需給の枠が国際的な広がりをもち,天候などの要因に左右され価格変動の激しい一次産品価格を輸出,輸入国の一方に偏らないような手段のなかで安定させるのが目的である。第2次大戦前にも1931年の国際砂糖協定,33年の国際小麦協定などいくつかの国際商品協定が結ばれているが,これらは輸出国の利益をはかるためのものか,あるいは国際カルテル的色彩が強いものであった。ITO憲章後の最初の国際商品協定は,49年発足の国際小麦協定,68年いったん国際穀物協定に改組し,その後71年に再び国際小麦協定としてスタートした協定である。小麦以外では発足年順に次の品目で協定がある(かっこ内は発足年)。砂糖(1954),スズ(1956),オリーブ油(1958),コーヒー(1963),ココア(1973),天然ゴム(1982),ジュート(1982),熱帯木材(1985)。国際商品協定の理想に近いといわれたのが国際スズ協定で,一定の安定価格帯を設定し,緩衝在庫をもってその価格帯内に価格を収める機能をもっていたが,緩衝在庫調整に失敗して財政的に破綻したため,1990年7月に終了した。砂糖,天然ゴムも同様の仕組みをもつが,価格の変動をコントロールするには至らず,スズにしても〈輸出国寄りで値上がり時に歯止めがかかりにくい〉という批判が輸入国には根強い。
→一次産品問題 →国際商品
執筆者:米良 周
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(永田雅啓 埼玉大学教授 / 松尾寛 (株)三井物産戦略研究所副所長 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
…価格の短期的激変は輸出国・輸入国双方に不利益をもたらすし,交易条件の長期的悪化は,一次産品輸出をおもな外貨獲得手段としている開発途上国に対し,輸出稼得の減少をひきおこし開発計画への不安定要因を生む。このため価格安定を目的として,現在,小麦,砂糖,コーヒー,ココア,オリーブ油,天然ゴム,ジュート,熱帯木材に関しての国際商品協定が設けられている。スズについては協定があったが,90年に解散した。…
※「国際商品協定」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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