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国際宇宙ステーション こくさいうちゅうステーションInternational Space Station; ISS

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

国際宇宙ステーション
こくさいうちゅうステーション
International Space Station; ISS

日本,アメリカ合衆国,ヨーロッパ諸国(ヨーロッパ宇宙機関 ESA),カナダ,ロシアなどの国際協力により開発が進められる大型有人宇宙施設(→宇宙ステーション)。構成パーツ(各種モジュール)を 40数回に分けて打ち上げ,宇宙空間で組み立てて完成させる。円軌道高度 330~460km,軌道傾斜角 51.6°。実験モジュール,居住モジュール,移動型サービス施設,補給モジュール,太陽電池パドルなどを備え,完成後は搭乗員 6人が常時滞在可能。
1982年からアメリカ航空宇宙局 NASAで話し合いが進められ,1984年,ロナルド・W.レーガン大統領が一般教書で実施を正式に表明,同年の主要国首脳会議(サミット)で各国に参加を呼びかけた。1988年,協力の枠組みを定める宇宙基地協力協定の交渉が行なわれ,日本をはじめとする 12ヵ国が署名。1993年にロシアも加わった。当初は「フリーダム」と命名されたが 1994年に現名称に変更。1998年11月,ロシアが最初の構成パーツである基本機能モジュール「ザーリャ(夜明け)」を打ち上げ,12月にはアメリカが二つ目となる結合モジュール「ユニティ(統一)」をスペースシャトル『エンデバー』より発射,ドッキングさせることに成功した。2000年ロシアの居住モジュール「ズベズダ(星)」,2001年アメリカの実験モジュール「デスティニー」とエアロック「クエスト」,カナダのロボットアーム「カナダーム2」,2007年アメリカの結合モジュール「ハーモニー」,2008年 ESAの実験モジュール「コロンバス」,カナダの特殊目的ロボットアーム「デクスター」が,それぞれ打ち上げられた。日本初の実験モジュール「きぼう」も 2008年3月に打ち上げられた。2009年現在の参加国は 15ヵ国。

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知恵蔵の解説

国際宇宙ステーション

米国が提唱し、カナダ、日本、欧州、ロシアが協力している有人の宇宙施設。高度約400km、赤道に対して傾斜角52度の軌道にサッカー場程度の大きさの多目的の建築物を建造する。米国のスペースシャトルとロシアのプロトン・ロケットを使って40数回に分けて宇宙へ機材を運び、宇宙で少しずつ大きく組み立てていく。2010年に完成予定。1998年11月にロシアがザリャー(曙)という制御棟を打ち上げ、次いで同年12月に米国がユニティ(統一)という連結棟を打ち上げ、軌道上でドッキングに成功した。その後も相次いで打ち上げが行われ、すでに飛行士の滞在が開始されている。2005年7月には、日本の野口聡一飛行士がスペースシャトルに搭乗してISSに入り、3回の船外活動を含む実験等を行った。07年から3回に分けて、日本の実験モジュール「きぼう」(JEM : Japan Experimental Module)が運ばれ、ISSに取り付けられる。その第1便のミッションに日本の土井隆雄飛行士の搭乗が予定されている。

(的川泰宣 宇宙航空研究開発機構宇宙教育センター長 / 2007年)

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デジタル大辞泉の解説

こくさい‐うちゅうステーション〔‐ウチウ‐〕【国際宇宙ステーション】

International Space Station》米国・ロシア・欧州諸国・日本・カナダの15か国が共同運用する有人宇宙施設。幅約108メートル、長さ約73メートル。地上約400キロ上空を周回しながら、宇宙環境を利用した実験・研究や地球・天体の観測を行う。ISS。
[補説]各国が開発したパーツを40数回に分けて打ち上げ、宇宙空間で組み立て、2011年7月に完成。複数の実験モジュール、それらをつなぐノード(結合モジュール)、居住モジュール、太陽電池パドル、ロボットアームなどで構成される。日本は実験棟「きぼう」と補給機「こうのとり」を提供。第39次長期滞在ミッション(2014年3月9日~5月14日)では、若田光一宇宙飛行士が日本人として初めてコマンダー(船長)を務めた。

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百科事典マイペディアの解説

国際宇宙ステーション【こくさいうちゅうステーション】

米国,ヨーロッパ,日本,カナダ,ロシアなどの国際協力で進められている有人宇宙基地。略称ISS。1998年冬に米ロが担当の部分の打上げをスペースシャトルなどを使い開始し,2011年7月に完成した。
→関連項目宇宙ステーションスペースシャトル

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

国際宇宙ステーション
こくさいうちゅうすてーしょん
International Space Station

宇宙環境を利用して研究や実験を行うための有人宇宙施設。略称ISS。アメリカ、ロシア、日本、カナダおよびESA(イーサ)(ヨーロッパ宇宙機関)加盟の11か国が協力して開発・運用を行っている。ブラジルはアメリカとの協力枠組みで参加している。地上から約400キロメートルの地球周回軌道を秒速約7.7キロメートル(時速約2万7700キロメートル)、軌道傾斜角約51.6度で地球を約90分で1周し、1日で約16周する。ISSの中は地上と同じ1気圧に保たれているが、重力は地上の100万分の1程度である。[森山 隆]

経緯と構成

1984年、当時のアメリカ大統領レーガンは年頭の一般教書のなかで、国際協力によりISSを建設することを提唱した(「フリーダム計画」)。その後、1988年に締結された日米欧・カナダの政府間協定を軸に、1998年にロシア、スウェーデン、スイスなどを加えた15か国によるISS協定が署名され、開発に着手することが決定された。1995年からスペースシャトルによる建設準備が始まり、1986年に打ち上げられたロシアの軌道科学宇宙ステーション「ミール」とのドッキングを1998年までに計9回実施して、ISS建設の事前確認を行った。建設資材の輸送はアメリカのスペースシャトルとロシアのプログレス補給船によって行われた。現在のISSの形態となったのは2011年で、同年11月から宇宙飛行士が滞在している。組立てが完了した時点のISSは、体積1200立方メートル、重量419トン、最大発生電力110キロワット、トラス(横方向)の長さ108.4メートル、進行方向の長さ74メートル、最大滞在人数は6名となった(2017年時点では6名体制で約6か月ごとに交代)。ISS船内は、滞在する宇宙飛行士の居住と作業の空間で、温度や湿度が調節され、乗員は地上と変わらない軽装で活動することができる。船内には乗員の生命維持システムや居住のための装置(トイレ、就寝スペース、運動設備など)のほか、各種実験装置が搭載されている。[森山 隆]

ISSのシステム

ISSの運用には電力システム、生命維持システム、姿勢・軌道制御システム、装甲・放射線防御システムなどがある。以下、それぞれについて概説する。
電力システム
 ISSは通常の人工衛星と同様に太陽光を電気に変換する太陽電池により必要な電力を得ている。ISSでは合計3万2800枚の太陽電池セルが使われている。軌道上での太陽電池パドルは長さが35.5メートル、幅が11.6メートルあり、直流で約33キロワットの発電能力がある。ISSはこれを8枚装備している。発電された電力は蓄電池に蓄えられる。当初はニッケル水素電池が使われていたが、現在は日本製のリチウムイオン電池(48台)が使われている。
生命維持システム
 生命維持システムはISSのなかでもっとも重要なシステムである。船内の気圧、酸素と二酸化炭素の濃度、水などを制御する。なかでも酸素の供給は重要であり、ロシアのエレクトロン(水を電気分解して酸素をつくる装置)とアメリカのOGS(Oxygen Generation System)により酸素の生成が行われる。万一これらが故障した場合は、キャンドルとよばれる円筒形のSFOG(Solid Fuel Oxygen Generator、固体燃料酸素発生装置)を使用する。二酸化炭素の除去は、一度ゼオライトに吸着させてから船外に放出することで再生を繰り返すロシアの「ボズドーク」(Vozdoch) とよばれる装置と、アメリカの「シードラ」(CDRA)によって行われる。次に重要なのは乗員が体内から排出した水分や洗浄水などの処理である。これまでは凝結させて回収・再生が行われていたが、それだけでは不十分なため輸送機による地上からの水の補給が不可欠であった。これを改善するために開発されたアメリカの水再生システム(Water Recovery System:WRS) は、空気中の凝結水だけでなく尿からも水を再生することで、地上からの水の補給をほとんど必要としなくなった。有害物質やにおいの除去には活性炭フィルターを使用している。
姿勢・軌道制御
 ISSの姿勢は4台のコントロールド・モーメンタム・ジャイロ(CMG)により制御されている。また軌道高度はあるリミット値の範囲で制御され、人工衛星のようにつねに精密な軌道制御は行わない。ただし、衝突の可能性のあるスペースデブリ(宇宙ごみ)が接近することが予測された場合は、回避のための軌道変更を行う。ISSの軌道は最低高度278キロメートル、最高高度460キロメートルの範囲に維持される。また高度は地球大気の抵抗によって徐々に低下(毎月約2.5キロメートル)しているため、毎年数回、高度を上昇させる制御を実施する。ISSの組み立て段階では、スペースシャトルができるだけ多くのペイロード(搭載物)をISSへ運べるように、高度は比較的低く抑えられていたが、現在は高度約400キロメートルで運用されている。
装甲・放射線防御システム
 10センチメートルを超えるスペースデブリをつねに地上の望遠鏡やレーダーで監視しており、ISSに衝突の可能性がある場合は軌道(高度)制御により回避する。一方、微小なスペースデブリは周回軌道に何万個もあるため衝突は避けられない。このため乗員が居住するモジュールには装甲(シールド板)が施されている。装甲はアルミニウムによる空間装甲と、衝突により発生した破片を受け止めるためのケブラー繊維製内張りで構成される。また、ISSでは乗員が宇宙放射線により被曝(ひばく)することは避けられないが、居住区画は放射線シールドを厚くして被曝量が少なくなるようくふうされている。大規模な太陽フレアが予測された場合は、深刻な被曝を避けるため船外活動は行わない。[森山 隆]

各国のモジュール

ISSはアメリカ、ロシア、日本などによるモジュールで構成されている。アメリカのモジュールはフリーダム計画から流用されたもので、NASA(ナサ)(アメリカ航空宇宙局)の設計標準や安全基準を適用している。スペースシャトルのペイロード・ベイの寸法にあわせて、直径4.4メートルの円筒形である。ロシアのモジュールは、単独で宇宙船としての機能を備えていることが特徴である。エンジンや自動操縦装置、通信システム、太陽電池パネルを備えており、単独で飛行して自力でドッキングすることができる。
 日本の実験棟(Japanese Experiment Module、略称JEM。名称「きぼう」)は、船内実験室のほかに船外実験プラットフォームを装備しており、宇宙空間に曝露した環境でさまざまな実験が行われる。実験装置を取り付ける場所は全部で12か所あり、実験装置を交換することで地球や天体観測などの実験が行える。「きぼう」の船内実験室は地上とほぼ同じ空気組成で1気圧に保たれており、温度や湿度も、宇宙飛行士が活動しやすい環境につねにコントロールされている。一方、宇宙空間にさらされる船外実験プラットフォームは曝露実験や天体観測、地球観測に利用される。「きぼう」の船外プラットフォームの大きさは5.0メートル(幅)×5.2メートル(長さ)×3.8メートル(高さ)で重量は約4.1トンである。[森山 隆]

長期滞在クルー

ISSに長期滞在するクルーは、ISSの保守作業や宇宙環境を利用した科学実験などを行っている。日本人宇宙飛行士の長期滞在は、次のとおりである(2017年4月時点)。若田光一(わかたこういち)宇宙飛行士は2009年3月から7月(約4か月間滞在)および2013年11月から2014年5月(約6か月間滞在)、野口聡一(のぐちそういち)宇宙飛行士は2009年12月から2010年6月(約5か月半滞在)、古川聡(ふるかわさとし)宇宙飛行士は2011年6月から11月(約5か月半滞在)、星出彰彦(ほしであきひこ)宇宙飛行士は2012年7月から11月(約4か月間滞在)、油井亀美也(ゆいきみや)宇宙飛行士は2015年7月から11月(142日間滞在)、大西卓哉宇宙飛行士は2016年7月から10月(約4か月間滞在)。金井宣茂(かないのりしげ)宇宙飛行士は2017年11月頃から約6か月間の予定となっている。[森山 隆]

ISSの運用

ISSシステム全体の運用管制は、アメリカのヒューストンにあるNASAジョンソン宇宙センターのISSミッション管制センター、およびモスクワのミッション管制センターがそれぞれ中心となる。「きぼう」の運用管制は宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))筑波宇宙センターの「きぼう」運用管制室で、24時間体制で行われている。
 ISSへの乗員の輸送は、2011年まではスペースシャトルで行われていたが、現在はロシアのソユーズ宇宙船だけである。アメリカは民間企業スペースX社のファルコン9とドラゴン補給機、オービタルATK社のアンタレスとシグナス補給機を使用した商業補給サービスを活用する計画である。JAXAは宇宙ステーション補給機(HTV)「こうのとり」を独自に開発し、ISSへの補給物資や実験機材を輸送している。HTVは、H-Bロケットにより種子島(たねがしま)宇宙センターから打ち上げられ、ISSに接近後、ロボットアームを用いてISSに結合される。食料や衣類、各種実験装置など最大6トンの補給物資をISSに送り届け、補給を終えた後は、用途を終えた実験機器や使用後の衣類など不要品を積み込み、大気圏へ再突入する。HTVは全長約10メートル、直径約4.4メートル、最大総重量は約16.5トンである。JAXAはHTVの後継機となるHTV-Xを計画中で、輸送能力を保ったまま製造コストを半減することを目標としている。2021年度以降にH3ロケットでの打上げが計画されている。[森山 隆]

実験・研究

ISSでは、「きぼう」を利用したさまざまな実験や実用化研究が行われている。対象とする分野は生命科学、宇宙医学・有人宇宙技術開発、応用利用、物質・物理科学、船外利用、アジアでの利用および人文・社会科学、有償利用などである。
 生命科学分野では、無重力や宇宙放射線にさらされる環境における生物の反応を解き明かし、生命現象の理解を深める研究を行う。
 宇宙医学・有人宇宙技術開発分野では、無重力や宇宙放射線、閉鎖環境が心身に与える影響を調べ、宇宙滞在中に宇宙飛行士に現れるさまざまな症状への対策を確立するための研究を行う。
 技術開発の分野では、宇宙と地球を結ぶ往還機や、宇宙で快適に過ごすための宇宙飛行士の活動環境の改善や、宇宙環境を計測し制御するための技術開発などを行う。
 応用利用では、宇宙で得た成果を地上の製品開発等に応用して地上生活の改善に貢献する研究を行う。タンパク質の高品質な結晶生成や、ナノ材料の創成などについて産業界、研究機関と連携して宇宙を利用した研究開発を実施する。
 物質・物理科学では、地上では重力に隠されているためわかりにくい物理現象のメカニズムを解明し、新材料の創成などの産業技術の基礎となる物理現象の理解を深める研究を行う。結晶の分子レベルでの成長過程観察、物質の流れの観察、材料創成プロセスに関連する基礎データの取得などの宇宙実験を行い、半導体や光学素子などの機能を高める製造プロセスの開発につなげる。
 アジアでの利用および人文・社会科学では、宇宙環境利用への興味や関心を高める人材育成、驚きや感動を共有する芸術ミッションなどを実施している。[森山 隆]

ISSの今後と課題

ISSの今後の運用については、2024年まで延長することを日米両国政府が合意し文書を取り交わしている。この協力文書では、ISSの利用が科学領域における理解を増大させてきたことを評価している。また、「アジア太平洋地域における宇宙途上国を含むISS非参加者との国際的な協力を増大させることは、重要な共通の関心事項である」ことも明記された。一方で、ISSに日本が参加する意義については、投資に見合うだけの十分な成果が得られているかどうかという議論がある。ISSの運用には年間約400億円の国費が投入されており、これに見合う経済効果をもたらす研究成果が求められる。[森山 隆]
『白石拓他著『国際宇宙ステーションのすべて――世界15カ国が参加する“宇宙の実験室”の全貌に迫る!! 』(2013・洋泉社) ▽狼嘉彰、冨田信之、中須賀真一、松永三郎著『宇宙ステーション入門』第2版補訂版(2014・東京大学出版会) ▽若田光一著『国際宇宙ステーションとはなにか――仕組みと宇宙飛行士の仕事』(講談社・ブルーバックス)』

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