移民の保護や難民の輸送などを行う国際連合の機関。英語の頭文字をとってIOMと略称する。「正規のルートを通して、人としての権利と尊厳を保障する形で行われる人の移動は、移民と社会の双方に利益をもたらす」を基本理念とし、紛争、迫害、自然災害、貧困などで国境を越えて移動する移民、難民、被災者らを支援する役割を担っている。ヨーロッパから中南米への移民支援組織として1951年に発足した暫定ヨーロッパ移民移動政府間委員会(ICEM)が前身。1980年に移住政府間委員会(ICM)に名称変更。1989年の憲章の改正を機に常設の国際移住機関となり、2016年に国際連合に正式加入した。本部はスイスのジュネーブにあり、世界100か国以上に事務所を置く。2017年12月末時点の加盟国は169で、ロシア、サウジアラビア、インドネシアなど8か国がオブザーバー国である。日本は1993年(平成5)に加盟した。トップは任期5年の事務局長職である。2017年の職員数は約1万人、活動予算は約15.5億ドル。
移民や難民に関する各種調査を実施し、移民・難民数のほか、それに伴う迫害や死傷者、人身取引、不法入国などの実態を世界に公表している。移民・難民個人に対する直接支援としては、難民の登録、医療機関への移送、仮設住宅の提供、移民や帰国者への小規模融資、帰還・定住支援、家族の呼び寄せ、渡航手続きや語学研修の支援などを実施。移民・難民や援助物資を安全に輸送するため、加盟国へ航空機や資金などの提供を要請するほか、緊急人道支援の必要性や救命活動を求める声明を世界に向けて発信している。このほか関係国への技術支援、移住問題に関する地域協力の促進、専門家の交流、元戦闘員の社会復帰支援などにも取り組んでいる。
[矢野 武 2018年9月19日]
(最上敏樹 国際基督教大学教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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