国際航空(読み)こくさいこうくう

改訂新版 世界大百科事典 「国際航空」の意味・わかりやすい解説

国際航空 (こくさいこうくう)

航空輸送のうち,一つ以上の国際飛行区間を含む運航をいう。ここでいう国際飛行区間とは,飛行区間の発着地点のいずれかもしくは両方が,その航空会社の所属国以外の地点である飛行区間のことである。国際航空には定期便と不定期便があり,旅客輸送貨物輸送,郵便輸送がある。

 国際航空は,第1次大戦後のヨーロッパで始まった。とくにドーバー海峡を横断してロンドンパリを結ぶ路線は,1919年末すでにイギリス側3社,フランス側3社の計6社によって運航されていた。しかし20年代前半までの航空機は,鉄道に沿って飛ぶ地測航法で,燃料補給時間を含めると時速平均8マイル,長距離飛行は不可能であった。27年5月にリンドバーグ大西洋横断無着陸飛行に成功してのち,航空機の安全性,高速性が認識され,航空投資ブームが生じた。航空機の軍事機動力に目をつけた各国政府は民間航空に対しても積極的な保護育成策を採用した。そして第2次大戦までに多くの航空会社は統合されてそれぞれの国のフラッグ・キャリアflag carrier(ナショナル・キャリアともいう)となり,国際線を運航した。すなわち,そのなかにはドイツのルフトハンザ,フランスのエール・フランス,イギリスのインペリアルオランダKLM,イタリアのアラリットリアなどがあった。アメリカではパン・アメリカンが国際線を運航した。使用航空機は多岐にわたっていたが,ドイツ製ユンカース52,アメリカ製DC3が戦前の花形旅客機であった。大洋横断の長距離航空はまだ発達せず,わずかに飛行船や水上機が利用されていた。

 第2次大戦中に航空機の性能,飛行技術がめざましく発達し,飛行場や航空路も整備された。また44年シカゴ会議において国際民間航空条約が結ばれるとともにICAOイカオ)が設立され,翌45年にはハバナ会議によってIATAイアタ)が成立するなど,国際航空秩序も整備された。そして国際航空の大発展の時代が到来し,その定期便旅客人キロをとってみると,1960年は1950年の4倍,65年は8倍弱,70年は16倍,75年は27倍,80年は47倍,90年は88倍になっている。国際航空の飛躍的発展には,航空機の高速化・大型化による単位輸送コストの低下,所得水準の向上があげられる。ジェット機が安定的に世界の航空会社で就航することになった1950年代末からは,世界中のすべての大陸,すべての主要都市は空路で結ばれることとなり,世界政治や世界経済のあり方,文化・学術・芸術の交流にはかり知れないほど大きな影響をおよぼした。また70年代初めにはジャンボ機も就航した。第2次世界大戦後,日本はいっさいの航空活動を禁止され,国際航空は1947年ノースウェスト航空による東京乗入れによって始まった。日本航空が国際航空を開始したのは54年サンフランシスコ便であった。その後日本航空は日本経済の成長とともに順調に発展して路線を拡張し,95年の国際線輸送実績では,旅客人キロ,貨物有償トンキロのいずれも世界4位の座を獲得している。

 70年代に入って国際航空はいくつかの大きな問題をかかえる。ジャンボ機導入に基づく供給過剰,石油危機による燃料費の高騰,景気後退から生じた需要の伸び率鈍化で,国際航空会社の経営が悪化した。路線の拡充を続けてきた発展途上国の航空会社は自国客に多くを望めず,旅客誘引のためのサービス競争を始め,そのうち多くがIATAを脱退した。大西洋では77年のレーカー航空の就航を契機に運賃切下げ競争が生じ,アメリカでは消費者運動を背景に78年に民間航空規制緩和法が,80年には国際航空輸送競争法が成立して,国際航空自由化への方向が打ち出された。これらの事態から判断して80年代の国際航空は激動の時代に入ったといえる。日本でも86年から国際線の複数社化(1986年全日空,88年日本エアシステムが国際線に進出)など自由化が始まった。
航空運送事業
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の国際航空の言及

【運送業】より

…なお,国鉄は1987年に分割・民営化してJR(旅客6社と貨物1社)となった。(1)市場の範囲による分類(a)国際運送 国際運送の代表的なものは,国際海運と国際航空である。国際海運の発達は19世紀に入ってからであり,旅客輸送においては移民船の就航から始まった。…

※「国際航空」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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