一般に地面の下にある部屋をいう。日本では建築基準法の「地階」の定義に準じて、床面から天井面までの高さの3分の1以上が地面の下にある部屋を地下室とみなしている。地下室は洞窟(どうくつ)型、覆土型、地階型の三型に大別される。洞窟型は地盤をくりぬいて洞穴をつくり、それを地下室とするもの、覆土型は地下に部屋をつくるか、埋め込んで上部を土で覆って地下室とするもの、地階型は建築物に地階をつくり、そこに地下室を設けるものである。地下室は、地下空間がもつ断熱性、遮音性、密閉性、あるいは神秘性などの特質を生かしての居住や貯蔵、避難などや、また限られた土地の有効かつ高度な利用を図る目的でつくられることが多い。地下室の起源は地下墳墓や洞窟住居にあるといわれる。古代から地下室は宗教的空間として、とりわけ地下墳墓として利用され、エジプトのピラミッドやローマのカタコンベなどはその代表例である。トルコのカッパドキアでは地下修道院の例がみられる。洞窟居住や地下居住も古くからみられる。現在でも気候条件の厳しい中国北部やチュニジアの南部では広範囲に地下居住が行われている。夏涼しく冬暖かい特性に着目し、この地下居住を積極的に推進する動きもある。たとえば、住宅をすっぽり地面に埋めるエコロジーハウスの普及がアメリカなどで進みつつある。日本では、地下室を住居として利用することについては厳しい制限があり、日照や採光、通風の問題をドライエリアや換気設備などによって解決しない限り地下に居室を設けられない。
地下室は恒温恒湿であるため保存性に優れ、食糧の貯蔵や貴重品の保管に使われる。ぶどう酒の貯蔵に地下室が用いられるのは有名である。地下空間は遮音性に優れ、オーディオルームやピアノ室などにも適する。騒音の発生源となる作業場を地下室とすることも考えられる。ほかに地下空間の遮蔽(しゃへい)性を生かした防災空間、避難空間としての利用がある。第二次世界大戦中につくられた防空壕(ごう)はこの例といえる。欧米では地下室を利用した核シェルターの普及が進み、日本では地震や大火に対抗する防災シェルターの開発が始まっている。
[室崎益輝]
出典 リフォーム ホームプロリフォーム用語集について 情報
…ドナウ川下流には最近まで半地下式の住居があったが,現在は少ない。しかし,石造の地下室(セラー)をつくる技術はラテン系諸国に営々と伝えられ,特にブドウの収穫とワインの製造には欠かせない施設となった。またこの地下室を含む石造の多層住居と,その前面に吹放ちの回廊または柱列を配し,上階にバルコニーをつけるデザインは元来は東方のもので,地中海沿岸からベネチアやイタリア西部を経て,アルプス以北の都市住居に伝えられていった。…
※「地下室」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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