改訂新版 世界大百科事典 「地元意識」の意味・わかりやすい解説
地元意識 (じもといしき)
自分の出生地,居住地あるいは勢力範囲である地域に対してもつ意識。郷土意識が異郷,おもに都市にあって芽ばえるのに対し,地元意識は中央を意識することから生まれるものといえよう。国家の中央集権化にともなって,国家中央とか有力な大手企業に対して,地元とか地元企業という形で意識化される受身の概念である。そのため中央には直結するが,他の地域には優先意識が強く,排他的になる。この場合,ある特定の地域が自分には特別のかかわりあいをもつとみなされるため,同じ地域内の人々との連帯感,帰属感は全人格的・一元的帰属となる。中央にいる国会議員が地元の利益に便宜を図るがゆえに,時に話題を巻き起こすのはこの構造のためにである。しかし,地元意識は地元の人間であればだれしもがもつというものではない。地元における利害の共有を媒介として作為的につくられるものであるために機能的であるといえよう。この点は郷土意識がつねに心情的であることとは異なる。
執筆者:中村 八朗
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報