地元意識(読み)じもといしき

改訂新版 世界大百科事典 「地元意識」の意味・わかりやすい解説

地元意識 (じもといしき)

自分の出生地居住地あるいは勢力範囲である地域に対してもつ意識。郷土意識異郷,おもに都市にあって芽ばえるのに対し,地元意識は中央を意識することから生まれるものといえよう。国家の中央集権化にともなって,国家中央とか有力な大手企業に対して,地元とか地元企業という形で意識化される受身の概念である。そのため中央には直結するが,他の地域には優先意識が強く,排他的になる。この場合,ある特定の地域が自分には特別のかかわりあいをもつとみなされるため,同じ地域内の人々との連帯感,帰属感は全人格的・一元的帰属となる。中央にいる国会議員が地元の利益に便宜を図るがゆえに,時に話題を巻き起こすのはこの構造のためにである。しかし,地元意識は地元の人間であればだれしもがもつというものではない。地元における利害の共有を媒介として作為的につくられるものであるために機能的であるといえよう。この点は郷土意識がつねに心情的であることとは異なる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「地元意識」の意味・わかりやすい解説

地元意識
じもといしき

特定の地域社会の住民がその地域社会に特定の帰属意識をもっているとき、それを地元意識とよんでいる。閉鎖的な「わが村」「わが町」の意識はこれに相当するものである。地元意識は、その地域社会が自然的環境や歴史的伝統一体化した共同体(とくに村落共同体)になっている所では、郷土意識、愛郷心と重なって鮮烈になりやすい。都市においても、その土地に長く居住するか代々居住する自営業などの旧中間層が多い所では、やはり郷土意識、愛郷心と重なって「われわれ意識」が強い地元意識が温存されることがある。地元意識の特徴は、それが特定の地域社会にのみかかわる特殊性をもっていることにある。したがって、地元意識はともすれば対抗意識やよそ者意識を駆り立てやすい性格をもっている。しかし、これと対極的な位置にある市民意識が形成されてきている点からいえば、地元意識はかなり薄れてきており、少なくとも変質してきている。

[高橋勇悦]

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